賢者の知恵
2015年01月19日(月) 週刊現代

「戦後70年」特別鼎談 児玉誉士夫 笹川良一 瀬島龍三 四元義隆ほか「黒幕たちの戦後史」を語りつくす 保阪正康×佐高信×森功

週刊現代
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暴力とカネの力を利用して、社会の表と裏をつなぐパイプ役—そんな男たちが日本社会の中枢を牛耳っていた時代が確かにあった。暴力団員を手なずけ、政治家や財界人を動かした「黒幕列伝」。

書けば消される

森 平成の世になって、政治家も財界人も小粒になり、いわゆる「黒幕」と呼ばれる人がほとんどいなくなりました。しかし、戦後70年の歴史のなかである時期までは、確かに黒幕たちが政治や経済を動かしていましたね。

保阪 戦後の黒幕の原点ということでいうと、やはりGHQ、米国との関係を抜きにしては語れません。例えば、マッカーサーの「片足」とまで言われたチャールズ・ウィロビーの周辺にいた人たちです。ウィロビーは参謀第2部の部長として諜報・保安・検閲を管轄した典型的な軍人タイプだけれど、彼の謀略を実行するために陰に陽に動いた日本人たちがいる。陸軍大佐で戦後はGHQのために戦史編纂に携わった服部卓四郎などです。服部らは吉田茂を暗殺してクーデターを起こそうと企てたこともある。暴力と威嚇とカネの力を使って、裏から社会を動かすという黒幕のやり方はここから始まります。

佐高 黒幕というのは基本的に右翼出身の人が多い。アメリカとつながった親米右翼です。典型的なのが、戦後の黒幕として最初に名が挙がる児玉誉士夫でしょう。戦前は鬼畜米英と言っていた人が、いきなり親米になるという……。

森 児玉は、晩年に自分がCIAの対日工作員だったことを告白していますからね。河野一郎や岸信介の後ろ盾として影響力をふるい、ある意味で自民党を作ったともいえるスケールの大きなフィクサーでした。

佐高 私がものを書き始めた'70年代には、児玉はまだ存命中。彼の話は本当にタブーで、児玉の「児」の字でも書こうものなら、消されるんじゃないかという恐怖感がありました。

保阪 共産党のような組織に守られていれば別ですが、普通の物書きはあえて児玉に触れようとはしませんでしたね。黒幕の力の源泉の一つは、やはりカネです。児玉は戦後、上海から引き揚げてくる際に、旧海軍の資産を持ち帰って、それを政界工作に使ったといいます。

森 戦時中は上海でレアメタルを扱って稼いでいたといわれていますね。そのカネで自民党の基盤が作られたといっても過言ではありません。

佐高 それだけ軍にべったりだった右翼が、戦後はアメリカにくっついて、ロッキードの秘密代理人にまでなってしまうんだからすごい。そして総会屋の元締みたいな形でカネを集めました。会社の中でなにか揉め事が起きると児玉に頼ることになって、あとは児玉に食い込まれるという構図です。日本の株式会社の多くが児玉のスポンサーになったと言ってもいい。

保阪 戦前から軍部や官僚と近しい関係だったという意味では、陽明学者・思想家の安岡正篤も同じ系譜の黒幕ですね。

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