NASA、Airbnb、Kickstarterなどに学ぶコミュニティづくり---カンファレンスや記念日イベント開催で成熟化が進む「職業としてのコミュニティマネージャー」

2014年11月にサンフランシスコで開催されたコミュニティマネージャーが集うカンファレンス、CMX Summit photo credit: Kevin Kluck

「コミュニティマネージャー」という職業や役割、意義にここ数年、急速に注目が集まっているようです。実は発祥の地である米国でも定義があいまいな部分もあるのですが、コミュニティマネージャーとは広い意味で企業、組織などの潜在・既存の顧客や会員、または内部の社員同士の関係構築をオンライン・オフラインの活動を通じて深め、事業や組織の活性化を促す存在として認識されています。

コミュニティマネージャーを語る際、ソーシャルメディアの運用をおこなうソーシャルメディア/マーケティング・マネージャー、あるいは地域の草の根活動、同窓会、テーマに基づいたオンラインのコミュニティの運営者(幹事)をも含む、広い意味で議論されることがあります。

ソーシャルメディアやスマートフォンが登場したことにより、ソーシャルメディア担当者を始めとして、広報・IR、カスタマーサポート、商品開発を含めた組織内外におけるあらゆるコミュニケーション機能を担うことを期待される風潮も実際に強くあるように思います。

ただ、一人の担当者がすべて実施するかはともかくも、組織内外の多様なステイクホルダーとコミュニケーションを取る際、透明性、信頼醸成、双方向性、適切なテクノロジー活用など、根底に通じるエッセンスとしては相通じるものが多くあるのではないかと思います。そんな視点に基づいて、今回は幅広く「コミュニティマネージャー」というトピックを取り上げてみたいと思います。

特に過去数年を通じて感じるのは、名刺に「コミュニティマネージャー」と記載された人が海外や国内でも増え、イベントやカンファレンスなどで話題にのぼることが急速に増えていることです。毎年1月の第4月曜日に設定されている「コミュニティマネージャー感謝の日」は今年で6年目を迎え、1月26日(月)には、日本を含め全世界で関連イベントが数多く予定されています。

たとえば昨年11月には「EGG JAPAN(日本創生ビレッジ)」主催で「The Power of Community~日本とU.S.のコミュニティマネージャーに聞くコミュニティの力」と題したイベントが東京・丸の内で開催され、「ピンタレスト・ジャパン」、「クックパッド」、「ツイキャス(モイ株式会社)」、「リンクトイン・ジャパン」、「Zendesk Inc」、「エバーノート」、「Uber Japan」、「Airbnb Japan」などの注目企業のコミュニティマネージャーや担当者が登壇。会場にも200名近くの人が集い、活発な議論や交流がおこなわれていました

米国で進む「コミュニティ・プロフェッショナル」業界の成熟化

コミュニティマネージャーを巡るトレンドを俯瞰するなかで2014年を振り返った際、サンフランシスコとニューヨークの2都市で3回に渡って開催されたカンファレンスの誕生と成長はとても注目に値するものでした。

全米からコミュニティマネージャーが集うカンファレンス「CMX Summit」は、第1回目として昨年2月にサンフランシスコで開催。好評につきその後、6月にニューヨーク、さらに11月には再度サンフランシスコでおこなわれ、次第に規模・人気が高まっていきました。主催者であるCMX Media CEOのデビッド・スピンクス氏によると、過去3回のカンファレンスに合計900人、海外も17ヵ国からの参加があったそうです。

過去の主なスピーカーによるプレゼンテーションはすべてオンラインにアーカイブされているのですが、多様な企業、スタートアップ、政府機関のコミュニティマネージャーや経営者が含まれています。

また、そのコミュニティの種類や目的も、顧客・ユーザーコミュニティの新規獲得・活性化を目的にしたものから、商品開発、ユーザーロイヤリティ向上、社内コミュニティ活性化、読者開発など、あらゆる分野がカバーされています。いくつかのプレゼンテーションをテーマごとに簡単にご紹介したいと思います。

以下、赤字表記されている企業・組織名、登壇者名をクリックすると英語での要約記事(アーカイブ動画含む)を閲覧できます。筆者は実際のカンファレンスには参加してはおらず、こちらの動画を全て閲覧して今回レポートしています)。

【1】顧客・ユーザー・読者コミュニティの新規獲得・活性化

・Product Hunt(プロダクトハント)

創業から1年という短期間でシリコンバレーを中心にテック系コミュニティでの人気を獲得したウェブプロダクトのレビューサイト。友達へのe-mailリストから始まり影響力のある起業家や投資家も注目するサイトがどのようにコミュニティを形成したか、13のポイントによる説明がなされた。

・BuzzFeed(バズフィード)

現在月間2億人もの訪問者を集めるエンターテイメント・ニュースサイト。2008年にコミュニティマネージャーとして創業8番目の社員として参画したジャック・シェパード氏によるユーモア溢れるプレゼンテーション。読者からのフィードバック、読者を巻き込んだクラウドソーシングを活用したコンテンツ作成の大切さについて語られた。

・Kickstarter(キックスターター)

世界最大手のクラウドファンディングプラットフォームサイトのキックスターターの責任者(VP of Community)は現在30人のチームを率いる。彼女が入社した2009年当時は全社員が82人のうちたった2名のチームでのスタートだったとのこと。コミュニティマネージャーを採用する際の適正、どのようにチームを成長させ、現在のようにオペレーション、エンゲージメント、コンテンツ・ポリシーという3つの部門が形成されたか、そしてスタートアップにとってのコミュニティマネージャーの果たす役割、将来の姿について語られた。

・Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)

CRMソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの提供企業として、B2Bのユーザーコミュニティを5人のチームで運営し、どのようにして150万人ものコミュニティから毎月4000もの質問が寄せられ、コミュニティにより100%回答が寄せられるようにまで成長させたかが語られた。

【2】企業・組織内の内部コミュニティの活性化

・NASA(米航空宇宙局)

スケールの大きなプロジェクトを進めるNASA内部の知識や知見を共有するような「コミュニティ・オブ・プラクティス」を実践しようとしたが従来からの古い文化・慣習や高い平均年齢などの理由から組織内コミュニティの立ち上げは苦労が伴った。それらのプロセスを通じて得た学びが共有された。現在は2名のスタッフで60ものテーマ別組織内コミュニティが運営されている。

・Etsy(エッツィ)

世界的に急成長を遂げているマーケットプレイス型ハンドメイド作品ECサイト「Etsy」の特徴のひとつとしてユーザーに愛されるような企業文化が挙げられる。どのようにしてそのような企業文化を社内からボトムアップでつくり上げているか、社員が故郷に帰省する際にミートアップイベント開催する際の財政支援制度や、社内タレントショーの実施など、具体的な事例が紹介された。

・Spark Capital(ベンチャーキャピタル)

TwitterやTumblrなど世界中に65社ほどのポートフォリオ企業を持つベンチャーキャピタルが起業家や各スタートアップの従業員を支援するためにどのようにポートフォリオ企業の壁を超えたコミュニティ構築に取り組んだか、その試行錯誤の過程が共有された。

【3】ムーブメントとしてのコミュニティ構築

・Meetup(ミートアップ)

2002年創業の世界中で2000万人が利用するイベントのプラットフォームサービス「Meetup」。創業者/CEOのスコット・ハイファマン氏は、コミュニティとは最も頻繁に使われ、誤解されたまま使われている言葉で、人々が互いに会話してなければ意味はない、と主張。コミュニティビルダーの役割は人をつなぎ、参加者同士で会話をさせること、20世紀から21世紀にかけてシェアエコノミーの登場などで社会やビジネスのモデルが大きく変わりつつあることを語った。

・Airbnb(エアビーアンドビー)

「暮らすように旅をしよう」をコンセプトに世界中の人々と部屋を貸し借りするサービスは世界中で急成長を続けているが、利用者の満足や口コミがそのまま事業の成長にもつながるという意味で「グロースハッキング」と呼ばれる文脈でもコミュニティ運営に注目が集まっている。

Airbnbのグローバルディレクター・オブ・コミュニティのダグラス・アトキン氏は以前にMeetup、社会変革やシェアエコノミーを推進するコンサルティング会社やスタートアップなどでのグラスルーツキャンペーンの経験も豊富に持つ。ビジネスの文脈でコミュニティを組織化することでビジョンを実現し、ムーブメントを展開する手法・原則を、豊富な事例を紐解きながら紹介した。

Airbnbのグローバルディレクター・オブ・コミュニティのダグラス・アトキン氏(photo: Youtubeより)

【4】コミュニティ運営専門家による具体的&俯瞰的な戦略

・リチャード・ミリングトン(Richard Millington, CEO of Feverbee)

コミュニティ運営コンサルティング会社のCEOであり『Buzzing Community』の著者であるミリングトン氏からは「中毒性のあるコミュニティをいかに形成するか」というテーマについて実践的な原則やテクニックが豊富に紹介された。

・エイミー・ジョー・キム(Amy Jo Kim)

日本語でも邦訳されている書籍 ネットコミュニティ戦略―ビジネスに直結した「場」をつくる(翔泳社 2001年)はコミュニティ運営に従事する人にバイブル的に長く読まれている書籍であり、ゲームデザイナーとしての実績も豊富にあるキム氏のプレゼンテーションはじっくりと視聴するに値する内容で参加者からも多くの賞賛のコメントが寄せられた。15年前にまとめられた「コミュニティ戦略9つの原則」は時を経ても変わらぬ重要性を持ち続けていることがよく分かるプレゼンテーションだった(9つの原則は以下スライドを参照)。 

ビデオアーカイブにはその他にもバーニングマン、FBI、Reddit、Startup Weekend、Twitchなどのコミュニティマネージャーによるプレゼンテーションが数多く保存されています。

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