16年度にも株式上場へ
悲願の完全民営化 多角的な事業展開で実現[JR九州]

JR九州(福岡市)が2016年度にも株式上場を果たす見通しだ。これまでの多角的な事業展開など経営努力が実り、今後も安定経営が見込めると政府が判断したためだ。今年の通常国会にJR会社法改正案を提出し、完全民営会社に移行させる方向だ。実現すればJRの上場は93年の東日本、96年の西日本、97年の東海以来。同社は経営基盤の弱さをさまざまな取り組みで克服し、国から経営安定基金を受けている北海道、四国を含めた「三島会社」では初の上場となる。

就任の記者会見で質問に答えるJR九州の青柳俊彦社長=福岡市博多区で14年6月27日

JR九州にとって上場は、87年の国鉄分割民営化以来の悲願だった。昨年6月に就任した青柳俊彦社長は「16年度までに上場する。できなければやめるつもり」と公言し、強い覚悟で上場問題に取り組んできた。

JR九州の株主は、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構で、実質的には国が保有している。同社が上場を目指すのは、実質的に国が株主では主要人事や事業計画、長期借り入れなどについて国の認可が必要で、国の実質管理下にあるためだ。上場で国の手から離れれば経営の自由度が増し、積極的で機動的な経営、自立した成長戦略を描くことができるようになる。

JR九州は、山手線や東海道新幹線といった「ドル箱路線」をもつ本州のJR3社とは異なり、「すべて赤字路線で、列車はお古ばかりのボロ会社」(同社OB)の状態でスタートした。当時の鉄道部門の赤字は280億円に上り、その穴埋めをするために受けたのが総額3877億円の経営安定基金だ。

基金の額は当時の金利水準でこの赤字をなくすように設定された。鉄道事業の赤字は現在まで続き、基金の運用益で赤字を穴埋めしている。14年3月期は鉄道事業の赤字156億円のうち約120億円を補てんした。

JR九州は分割民営化以来、列車本数を約8割増やし、新駅設置などで利用者の利便性を高めてきた。旅の意欲をかきたてるさまざまな観光列車を開発したほか、最近では11年に全線開業した九州新幹線や13年に運行を開始した豪華寝台列車「ななつ星in九州」も好調だ。14年3月期の鉄道部門の赤字は発足当時から約4割圧縮している。

ただ、沿線の人口減少が続く中で現行路線を維持しながら鉄道事業を黒字化させるのは至難の業だ。JR九州は切符のインターネット販売促進、みどりの窓口の削減などに今後の活路を求めるが、JR九州幹部は「収支をトントンにするのは最低4、5年かかる」と本音を漏らす。

「ダボハゼ商法」で業容拡大

JR九州は発足以来、鉄道部門以外の収益で業容拡大することに力を注いできた。その貪欲な姿勢は、社外の人間から儲けが出ることであれば次々に手を出す「ダボハゼ商法」とやゆされるほどだった。

現在は「JR博多シティ」などの駅ビル事業や分譲マンション「MJR」などの不動産事業を展開。ドラッグストアチェーンの「ドラッグイレブン」など流通・外食事業やホテル事業でも九州域外への展開を図った。最近ではニラ栽培などの農業にも手を広げ、遊休施設を活用した学童保育にも乗り出す構えだ。

こうした姿勢を受けて、14年3月期の連結売上高に占める鉄道事業以外の割合は発足時の3割から6割に拡大。全体の売り上げは3548億円と発足時の2倍以上になった。営業損益も発足時288億円の赤字(単独ベース)が、90億円の黒字(連結ベース)になっている。直近の14年9月中間連結決算は売上高、最終利益ともに過去最高を記録した。

「少子高齢化や高速道路網の発達などで経営環境は厳しいが、それでも完全民営化に向けて経営努力を積み重ねてきた」とJR九州幹部は振り返る。

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