芸大が音楽の「早期英才教育」
地方の「逸材」を発掘し直接指導今春から試行[大学]

大胆な改革の乗り出している東京芸術大学=東京都台東区で

日本で唯一の国立総合芸術大学、東京芸術大(東京都台東区)が今年から、音楽部門での「早期英才教育」に乗り出す。地方で音楽の才能にあふれた小学生を発掘し、芸大教授が直接指導するのだ。確かに音楽的才能は幼少期から開花するケースもあり、さらに地方創生の観点も加えれば、世界で活躍するアーティストの育成には、良いアイデアといえる。芸大は来年度以降、中学生や高校生も「発掘」対象とし、開催場所も北海道から九州まで全国規模とする方針だ。日本の芸術戦略に一石を投じる可能性がある。

芸大によると、今春実施する試行計画はこうだ。

タイトルは「早期教育プロジェクト」。2月に福岡市で、3月には札幌市で、小学4~6年生を対象に実施する。福岡はバイオリンとフルート、札幌はピアノとバイオリン、フルートの部門だ。

事前に募集をかけた小学生を、芸大の教授陣が現地にいる芸大卒業生らの協力を得て、書類選考などで事前に選抜。各地区12~24人程度に絞る。その上で、芸大の音楽学部長ら教授陣が福岡、札幌に出向き、公開レッスンをするという。この地方レッスンは一般にも無料で公開され、誰でも見ることができる。

見つけた「逸材」は、夏休みなどの長期休暇に東京・上野にある芸大に「招へい」。1週間ほど合宿を組んでレッスンを続ける。夏のオープンキャンパスに合わせて実施することも計画中だ。

当初、中学生を対象にすることも検討したというが、最初の「試行」でもあり、小学生をターゲットにしてみることで落ち着いた。

しかし、芸大の担当者は「来年度以降は、中学生・高校生、さらに小学校低学年の児童にも対象を広げたい」と話す。つまり、大学生未満の子供たちすべて。そこまで広く網をかけて、徹底して「逸材」を発掘しようという意気込みがあるのだ。さらに、今回の試行ではピアノ、バイオリン、フルートの限定だが、将来的には他の管楽器も対象にする方針だ。

地方レッスンの会場も、福岡や札幌のほか、大阪や名古屋といった大都市で、幅広く開催する方向。全国の小学生から高校生まで、あらゆる楽器で音楽に秀でた才能を見つけていくのだ。芸大は、発掘した若手に教授陣がレッスンを施し、国内外のコンクールに積極的に挑戦して欲しいという。

16年度から「飛び入学」も導入

さらに2016年度入試からは、高校2年修了時に入学できる「飛び入学」制度を導入する予定だ。国際コンクールなどで卓越した才能を見せた高校2年生を対象に実施。枠は「若干名」といい、現在、詳細な制度設計を進めている。

これらの計画の背景にあるのが、「子供の音楽離れ」だ。幼少からピアノやバイオリンのレッスンを始める子供はいる。町中の音楽教室に通ったり個人教授についたりして、小学校の高学年までは続ける。だが、都市部を中心とした中学受験、あるいは高校受験といった進学問題を契機に辞めていく子が多いのだという。残った一握りの子が、芸術系の進路を選んでいる状況に危機感がある。

少子化が進めば、若手の音楽人口もさらに減るのは確実で「音楽の裾野を広げる」「音楽好きな子供の可能性を伸ばす」効果も狙っている。さらに「演奏は自らしないが、音楽には興味がある」という一般層にも働きかけるイメージだ。

その上で「芸大を受験して、ぜひ入学して欲しい」(担当者)という本音もある。スポーツと同様に裾野が広がれば当然、トップレベルの水準もさらに上がる。世界で活躍できる音楽家を、今まで以上に芸大から輩出することに結び付く。

現段階では「音楽部門」での逸材発掘だが、ゆくゆくは美術部門にも広げたいという。まだ、定かではないが「イラスト部門などは可能かもしれない」と担当者は話す。

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