排出削減の自主目標ルール合意
事前検証の導入見送り 実効性の確保に疑問符も[COP20]

COP20の交渉の加速化を求めて集まったNGO(非政府組織)のメンバー=ペルー・リマで14年12月8日

ペルーの首都リマで国連の気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)が開かれた。最大の焦点は、各国が参加する2020年以降の温室効果ガス排出削減の新枠組みに関する骨格づくりだった。各国が削減目標を自主的に掲げる基本ルールを盛り込んだ合意文書の採択にこぎつけたものの、中国などの反対で、目標が妥当なものかを事前に検証する仕組みの導入は見送られた。国際社会は15年末にパリで開かれるCOP21で新枠組み合意を目指すが、世界で取り組む温暖化対策の実効性に疑問符がつくことになった。

温暖化の被害が深刻化することを避けるための目安として、産業化前に比べて地球の平均気温の上昇を2度未満に抑えることが、世界共通の目標になっている。

地球温暖化対策はこれまで、先進国にのみ温室効果ガスの排出削減義務が課せられていた。1997年に京都市で開かれた地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択された京都議定書に基づく。

当時は先進国の二酸化炭素(CO2)排出量が世界の6割を占めていたが、中国やインドなど新興国の経済成長に伴い、現在では途上国の排出量が先進国の排出量を上回っている。また、経済への影響などを嫌った米国は京都議定書から離脱していた。

そのため、新枠組み交渉では、排出削減の効果を上げるため、米国や中国を含む全ての国が対策に取り組むことになった。13年にポーランドのワルシャワで開かれたCOP19で合意された。

また、排出削減方式は、京都議定書のように各国に削減量を割り当てるのではなく、各国が自主的に目標を掲げることになった。

しかし、削減を各国の自主性に任せるだけでは、どうしても目標が甘くなりがちだ。実際、国連環境計画(UNEP)が現在までに提出された目標を分析した結果、「2度未満」の目標達成にはほど遠いと報告されている。

このため、COP20では、それぞれの目標の妥当性を各国が互いに検証する仕組みが導入されるかどうかが最大の注目点だった。

COP20の日程は14年12月1~12日だったが、温暖化対策に関する資金援助の在り方などを巡り、先進国と途上国の対立が続き、会議は2日間延長された。

採択された合意文書によれば、全ての国が今より進んだ温室効果ガス削減目標を出し、その達成年度や期間を明記する。温室効果ガス削減量だけでなく、算出根拠や温暖化対策への貢献度の説明なども含める。各国はできる限り15年3月までに削減目標を国連に提出するというCOP19の決定事項も再確認された。気候変動枠組み条約の事務局は、各国の目標をウェブサイトで公開し、同11月までに報告書にまとめる。

交渉で各国の意見が対立したのが、削減目標案の検証と、温暖化の影響を軽減する対策(適応策)や先進国から途上国への資金援助を目標に含めるかどうかだった。

特に、途上国がこだわったのが適応策の記述だ。背景には「先進国が排出してきたCO2で、途上国が被害を受けている」との考えがある。適応策を目標に記述することで、災害に備える資金支援を先進国から引き出す戦略だ。

しかし、先進国の反対で「目標に含めるかどうか検討する」とのあいまいな表現にとどまった。

削減目標の検証については、欧州連合(EU)などが導入を強く主張していた。議長案では「事前検証に関する会合を15年6月に開く」と書かれていたが、内政干渉を嫌う中国などの強硬な反対で削除された。「15年5月までに目標を提出する」「先進国は19年以降毎年、温暖化の著しい国に対する支援の数値目標を検討する」などの文言も、各国の意見調整が難航し、やはり削除された。

米中が交渉を主導

COP20交渉を主導したのは、11月にそろって20年以降の削減目標を表明した米国と中国だった。これまで温暖化対策に後ろ向きだった2国が前向きな姿勢に転じたことは、会議でも歓迎された。

中国は米国を抜き、世界最大のCO2排出国になっている。米国と併せると世界の温室効果ガス排出量の3分の1を超す。

2国の目標は、米国が「25年までに05年比26~28%減」、中国が「遅くとも30年ごろをピークに減少させる」というものだ。

残りの任期が2年となったオバマ大統領は、環境分野で実績を残したい。大気汚染が深刻な中国は温暖化対策を環境対策と結びつけたい。それぞれの思惑が一致したといえる。しかし、環境NGOなどからは「中国の目標は不十分だ」という指摘も根強い。米国も、2年後の大統領選で共和党候補が勝てば、政策が転換される可能性がある。

それでも、この2国の参加抜きには新枠組みは成り立たない。

合意文書から事前の検証制度が抜け落ちたのも、多くの国が、内政干渉を嫌う中国に譲歩した結果だった。米国も「厳しく引き上げを求めれば、最初に提出する目標を低くする国が出る」と主張し、日本なども賛同した。

新枠組みの合意を目指すパリのCOP21まであと1年足らず。どこまで削減の実効性を確保することができるのか。各国の姿勢が問われることになる。

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