「理系で鍛えた技術を持って、農業における生産と消費の課題を解決したい」---日本情報化農業研究所代表取締役・古荘貴司
古荘貴司(ふるしょう・たかし)
1979年6月26日生まれ。2003年京都大学工学部物理工学科機械システム学コース卒業。2005年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻修士課程修了。2005年株式会社日本情報化農業研究所を設立、代表取締役就任。

私たちの生活に必要不可欠な産業である"農業"。担い手の高齢化と減少は進み、法制度の問題からも新規参入や改革が難しいと言われるその業界に、京大理系で鍛えた思考と技術を持って、挑戦している人がいる。

古荘貴司氏(35)。2005年に株式会社日本情報化農業研究所を立ち上げ、農薬や化学肥料を使わない野菜の栽培や年々増える耕作放棄地の改良など、高騰する肥料や燃料には依存せず美味しい野菜を作り、高収益を得る仕組みを構築している。他にも、IT化が遅れていると言われる農業分野のWEBマーケティングをサポートするサービスSOY CMS、農業の現場の業務情報を写真を中心に共有するコミュニケーションアプリhouren.soを提供する。

耕作放棄地を改良作業中の古荘氏

灘校出身、京都大学工学部物理工学科機械システム学を卒業後、同校大学院情報学研究科システム科学専攻修士課程修了。農家でもなく、その経歴からすれば農業には縁のない古荘氏がなぜ、農業分野で起業をしたのか。どんな課題をどんな技術を持って解決しようとしているのか。創業から10年目を迎える今、これまでをどう振り返り、未来に何を見据えているのか---。

都内中心部で技術提携に関する会議、その後野菜の試食会を実施。翌早朝に関西に戻り金融機関の方と打合せ。また都内に移動し既存顧客とのミーティング。再度関西に移動し、畑の候補地で地元の方に計画を説明。既に借りている畑に小売店の方をご案内し、スタートしている土壌改良作業の様子を解説。空いた時間にはトラックを運転して資材の運搬。2014年12月のある週のスケジュールだ。

日本情報化農業研究所では現在、無農薬・無化学肥料で高品質な野菜を大規模に生産することを目指し、会社直営の農場をオープン、拡大することに奔走している。

無農薬・無化学肥料で生産したキャベツ

私たちにとって農薬や化学肥料を使わないのは、目的ではなくよりおいしい野菜を作るための手段だ。植物の性質を考えると本当においしい野菜を作るためにはそういった資材は使えないというのが、栽培技術に関する研究開発を続けてきた中での今のところの結論だ。どういった経緯があって今の活動をスタートさせたのか、そのような結論に至ったのかお話したい。

農業に触れたきっかけ

よく聞かれるのだが、私自身は祖父母までさかのぼっても農家出身ではなく、大学で学んだのは機械工学、情報科学であり、農業とは縁がなく育った。

もともとは普通に就職活動をして内定ももらっていたのだが色々あってお断りしていたところ、農作物の流通事業の立ち上げに誘われ参加した。それが農業にかかわった最初のきっかけだった。

農家さんにひたすら「あなたの野菜を扱わせてください」と電話をかけてお話の約束を取り付ける。名簿は新聞に載っている「誰々さんの野菜が品評会で賞を取りました」というような記事を図書館に行って集めてきて電話帳で番号を調べて作ったものだ。2004年秋、スタートした当時はまだ大学院生だったので、電話をかける、農家さんのところにお伺いする、夜も10時をまわったころに研究室に行って深夜まで研究、という生活が毎日続いた。

最初はほとんど断られることもなく、面白いように多くの方にお会いすることができた。楽しかった。しかし、実際にどれだけの量を扱わせてもらえるかとなると急に厳しいお話が続く。今収穫のめどが立っているものは基本的にはすべて売り先があるので、新しいルートに出すとなると、余っているものか次回に作る分からになるからだ。限られた量だといただけるマージンもごくごくわずかな金額だ。お話に行くガソリン代さえ賄えない。

大学院の修了時期が迫っている。このまま売上が増えなければ4月からは無職だ。そんな焦りが募っていたが「今は少量でも一度取引してくれた方は次回も取引してくれるだろうから時間がたてば売上は積みあがっていくはずだ、だから今は我慢するしかない」という方針で仕入先の開拓を継続した。

農家さんのところまで車を運転していくのは最初は楽しいことだったのに、このころのハンドルはとても重かった。

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