人材の成長こそが会社の成長。限界にチャレンジすれば問題を突破する「知恵」も身に付く
小山昇『右肩下がりの時代にわが社だけ右肩上がりを達成する方法』【第6回】

【第5回】はこちらからご覧ください

わが社が日本経営品質賞にチャレンジした理由

武蔵野は、2000年度と2010年度の2度にわたって、「日本経営品質賞」を受賞しています。2004年度にも日本経営品質賞にチャレンジしていて、こときはいい線まで行きましたが、残念ながら賞には縁がありませんでした。2009年度は受賞こそ逃したものの、受賞組織2社と同レベルの総合A+評価をいただいています。

日本経営品質賞へのチャレンジは、簡単ではありません。仮に、課長職以上に無記名のアンケートを取って「日本経営品質賞へチャレンジにしたいですか? したくないですか?」と質問をしたら、8割以上「やりたくない」と答えると思います。

正直、私自身も「面倒だ」と感じます。
私だって最初は、南後浩さんや(武蔵野顧問)末松清一さん(末松企業進化研究所)から「やれ、やれ」と迫られ、嫌々ながらしかたなく腰を上げただけです。こんな面倒なことは、1回やれば十分です。

それなのに武蔵野は、どうして何度もチャレンジしたのか。それは、日本経営品質賞にチャレンジするたび、社員の資質が底上げされるからです。

中小企業にとって、「人材の成長」こそ会社の成長です。そして、日本経営品質賞に高い教育効果があるとするなら、たとえそれが「高い壁」であっても、チャレンジしなければなりません。

環境を変えることで、他律的に限界を突破させる

人は、「ラクをしたい」「そんなしんどいことはしたくない」と思うのが普通です。落ちこぼれ集団の武蔵野には、自発的に「高い壁」に登ろうとする社員も、「限界」にチャレンジする社員もいません。

そこで私は、「環境を変える」ことによって、社員に新たな「壁」を与えています。自律的な成長に限界があるのなら、他律的に限界を突破「させなくてはならない」。だから人事異動です。私は人事異動を「限界」を突破するための場としても位置づけています。

子どもの成長が早いのは、幼稚園→小学校→中学校→高校→大学と、常に成育環境が変わっている(強制的に変えられている)からです。

わが社の人事異動も、それと同じです。社員個々人の適性を生かしながら、お客様の都合と会社都合を優先して、3年で強制的に異動させる。だから社員は成長し、組織も成長します。

無理な目標に挑戦するからこそ、知恵が生まれる

以前、20代の社員を集めて「20年後の組織図」を描かせたことがあります。そのとき「自分は課長になっている」と書いた人は、その後、課長になりました。
「本部長になっている」と書いた人たちは本部長のポジションに就きました。みな、思い描いた結果を手にしたわけですが、じつは、「それ以上の出世」はしていません。どうしてでしょうか。

自分で出世の限界を決めてしまったため、「それ以上の努力」をしなくなったからです。

今の時代、大切なのは知識ではなく、知恵です。ですが、高い目標を持って、その実現のための努力を続けなければ、「知恵」を身に付けることはできません。

勉強をすれば、「知識」を身に付けることはできます。ですが、知識だけでは役に立ちません。「知識」は記憶・記録にすぎず、「体験」や「実行」や「行動」がともなっていないからです。知恵と体験を応用させたものを、「知恵」といいます。

知恵は、「困ったとき」にしか生まれません。「どうしたらいいのかな、こうしたらいいのかな」と困っているから、「そうか、こうすればいいんだ」と新しい発想に気がつけます。では、「困る」にはどうしたらいいのか。高い目標を持つことです。常に、限界にチャレンジすることです。

私はこれまで、目標を達成したことが一度もありません。目標の数字を大きく掲げ、「過去に一度も達成したことがない」のが自慢です。目標を達成して喜ぶのは、計画が甘かっただけ。「自分が努力していなかった」という評価にすぎません。

無理な目標に常に挑戦しているから、知恵が出てくるのです。

<了>

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小山昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。
1948年生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、87年に株式会社武蔵野に復帰。89年に社長に就任し、現在に至る。
同社は08年のリーマンショック、11年の東日本大震災の間にも成長を続け、「12年連続増収増益」を達成。また、14年の消費税増税にもほとんど影響を受けず、最高益を狙う。
01年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開し、業種横断的に500社以上の会員企業を指導。指導企業の中には業界的や市況的に厳しい状況に置かれている会社も多いが、13年度において「5社に1社は過去最高益」を達成。
99年度「電子メッセージング協議会会長賞」、01年度「経済産業大臣賞」、04年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて、「日本経営品質賞」を2度受賞(00年度、10年度)。
おもな著書に『5年で売上2倍の経営計画をたてなさい』『絶対に会社を潰さない強い社員の育て方』(以上、中経出版)、『強い会社の教科書』『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』(以上、ダイヤモンド社)、『増補改訂版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など多数。

小山昇・著
『右肩下がりの時代にわが社だけ右肩上がりを達成する方法』
KADOKAWA/定価1,500円(税別)

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