「餃子の王将」社長大東隆行氏はなぜ殺されたのか――捜査線に浮上した2人の女性。凄腕のヒットマンと中国残留孤児の老婦人
一橋文哉・著『餃子の王将社長射殺事件』より

<第一回>はこちら
「餃子の王将」社長大東隆行氏はなぜ殺されたのか――迷宮入りと囁かれる事件の謎をジャーナリスト・一橋文哉が追った

 「餃子の王将」社長射殺事件・第2回
『犯罪の陰に“中国から来た2人の女性”あり』

「犯罪の陰に女あり」
実際に発生した事件はもとより、犯罪を扱った小説やドラマなどで、この言葉がよく聞かれる。

2013年12月に京都市で起きた「餃子の王将」社長射殺事件も同じだなどと言うと、殺害された大東隆行社長(当時72歳)の女性関係が派手だったのかと勘繰られそうだが、そんな事実はない。

ただ、王将事件の陰で注目される女性が2人いた。1人は大東氏を殺害した実行犯、もう1人は犯行動機にかかわりを持つと見られる人物で、ともに“中国から来た女性”という共通点がある。

女殺し屋「抱きつきのリン」が急浮上

この事件は動機を持つ黒幕的人物が高額報酬で実行犯を雇い、同時に真の標的が大東氏ではなく別にいるのではないかというダブル「二重構造」犯罪の可能性が高いことを前回、指摘した。

京都府警が犯行現場付近の防犯カメラを調べたところ、実行犯は「背が低く細身で長髪」の一人で、オートバイで逃走したことが判明。その前後を走る1台の車があり、府警は「外国人ヒットマンとそれを支援するプロ集団による計画的な犯行」と断定した。

バイクは現場の北東2キロの駐車場に乗り捨てられているのを発見。事件2か月前に京都府城陽市で盗まれたもので、ハンドルから硝煙反応が確認され、現場に残されたタイヤ痕跡とも一致した。

そして、府警が事件前後の関西国際空港など周辺空港の出入国記録を調べた結果、事件前日に中国から関西国際空港を経て入国し、事件当日のうちに同空港から中国にトンボ返りするという不可解な行動を取っていた中国人の存在が浮上した。しかも、その中国人のパスポートは他人名義で偽造されたものであったが、同空港の防犯カメラなどから若い女性であることが分かったのだ。

中国人ヒットマン派遣組織に詳しい暴力団組員によれば、ボスは大連や上海など中国大陸にいて、在日中国人の代理人を通じて1人当たり400万円前後の成功報酬の半分を手付金として送れば、要請に応じた中国人ヒットマンを送り込んでくる。標的に関する情報収集や現場の下見、凶器の準備、逃走の手引きは暴力団など日本側の支援者が行い、実行犯は殺害直後に帰国するため、何の痕跡も残らない。残金を振り込めば完了で、アシが付く心配はまずない。

この組員の話では、出入国記録に出てくる女性と同年代で、防犯カメラが映し出した「背が低く細身で長髪」の女は、「至近距離からの連射を得意技とし、『抱きつきのリン』の異名を持つ凄腕の女殺し屋以外には思いつかない」(前出の組員)という。

確かに実行犯が女なら、プロの殺し屋らしからぬ小型拳銃の使用も頷けるし、連射には自動式拳銃が適する。女ゆえ暗闇で接近しても警戒されず、前回書いたように「絶命まで時間がかかり苦しみながら死ぬように銃撃する」との難しい要求をこなす技能もある。

警察当局は「リン」の存在を把握できていない。組織側によると彼女は中国東北部出身で、東北マフィア傘下のヒットマン組織に所属し、大連か瀋陽を拠点に活動。「フィリピンやタイで、地元企業のトップを同じ至近距離から連射という手口で暗殺したが、確証を掴ませず、指名手配もされたことがない凄腕」(同)なのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら