小田嶋隆【第1回】もの書きのプロと素人を分ける才能は、一定のクオリティを保つ”ゾーン”に自分を持っていく力

小田嶋隆氏と慎泰俊氏

〆切によって書くモチベーションが保たれる

慎泰俊: 尊敬するプロフェッショナルの方にその「仕事ぶり」を聞く連載第5回弾、今回は小田嶋隆さんにお話をうかがいます。

日経ビジネスオンラインの小田嶋さんのコラムは、ものを書く人間の一人として「これはすごいな」と思いながらいつも拝見しています。たとえばあのコラムは、1本書くのに大体どのくらいの時間を掛けているんですか?

小田嶋: もう始まって4、5年経つから、大分時間も掛からなくなってきましたが……大体6、7時間くらい掛かりますかね。金曜日のコラムで、いつも木曜の午後4時にはタイトルができていなければいけないので、その段階でタイトルがつく程度のラフな原稿をお出しして、完成するのが夜10時くらいです。

慎: 私も日経ビジネスオンラインにコラムを書いていましたけど、2日前に出さないと怒られていました…(笑)。キャリアが長く、PVも多いとギリギリでも許されるのでしょうか。

小田嶋: いや、私の場合はそういう問題じゃなくて(笑)。駆け出しの頃からそういう書き手だったんですよ。立場が弱い頃からそうなんで、「あり得ないだろう、おまえ」なんて言われながらも、どうしてもダメで。

物を書くときにいちばん難しいのは、何を書くかですね。アイディアなんかないような気がしているんですよ。でも、「もう原稿落ちるよ」ってタイミング、今から書き始めないと、どう考えても物理的に間に合わない、という時間があると、それが近づいてきたときにムクムクとアイディアが湧いて出てくるんです。

結果論ですけれど、それは本当はアイディアの問題じゃなくて、やる気というかモチベーションというか、原稿に向かうときの強制力の問題なんですよ。それは〆切から逆算して出てくるから、私は〆切がないと何にも書けないと思うんですよね。

慎: たしかどこかで「モチベーションも才能だ」ということをおっしゃっていましたね。時間をかけて考えが深まる分、早く書き始めたほうが良い物を書ける場合もあるなぁとは思うのですが、どう思われますか?

小田嶋: それはおっしゃる通りだと思うんですよ。私もものによっては早く書く場合もあります。でもそうするとすごくいじくっちゃうじゃないですか。できあがったと思ってもう一度見直してみると、「ああ、もう少しここを…」と、ちょっと欲が出ちゃうんですよ。

そうすると、手を掛けたほど大抵良くなるんですが、いじくっているうちにわかんなくなっちゃうこともあって。ギリギリだとそれができないから、悪い意味ではちゃんと見直せないということなんだけど、ただ、時間を掛けないで済むということはあるんです(笑)。

手を掛ければいくらでも掛かっちゃうので、ギリギリまで、「もう原稿落ちちゃうよ」というところまで書き始めないようにしているわけです(笑)。

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