矢島里佳×遠藤貴子×村田マリ【第3回】起業家というよりクリエイターという感覚で、小説を書くように事業計画を立てる
左から、本荘修二氏、矢島里佳氏、遠藤貴子氏、村田マリ氏
本荘修二氏の連載「明日をつくる起業家」の2周年を記念して、12月1日にアカデミーヒルズで開催されたイベント「女性起業家、明日への挑戦」。”0から6歳の伝統ブランドaeru”株式会社和える代表取締役の矢島里佳氏、東京限定のあられ・せんべい専門店「つ・い・つ・い」代表取締役の遠藤貴子氏、リフォーム・インテリアの情報サイト「iemo」代表取締役CEO/DeNA執行役員の村田マリ氏をゲストにお迎えし、女性起業家としての原点と生き方、未来について語っていただきました。

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必要な経費を積み上げて、その結果で市場価格を決める

本荘: このお三方がやっていることは、やっている仕事の仕方やアウトプットを見ても特徴的なのが圧倒的な品質です。マリさんの場合はそれがインターネットなのでスピードと品質という形になっていると思います。

矢島さんはたとえば普通に器を売ろうと思ったら、算盤を弾いて「この辺が売れ筋ゾーンで」とか「コストがどうの」とかあるわけですが、そういうこと気にせずに最高のものを作ったって感じじゃないですか?

矢島: 算盤を弾くことも大事なんですけど、それは最後なんですよね。私自身大学4年生のときに起業しているので、社会人経験もないですし、ましてや物を売ったこともないし、商品開発をしたこともないし、お金もないし、何にもないというところから、とにかく私が出会った魅力的な職人さんの技術を次の世代の子どもたちにつなげたいし、もっと言うと自分自身の生活に採り入れたいなというところから始まっているのです。

「ジャーナリストである」というのが和えるの軸としてあって、そして教育的な要素があるというのが重要で。長い間、モノづくりの世界は、物を作れる技術を持っている方々が最も低い賃金で働き続けてきたんですね。職人さんから、「お客さまは神さまです」という時代があったんだと歴史を教えていただいて、私はそれがすごく不思議だったんですよ。

お客さんは物を作れないからそれを買いにくるわけですよね。経済は元々は物々交換から始まって、野菜と魚を交換して、野菜が採れなかったときに、石と魚を交換してもらって、その石が銀になって金になって、そして今、貨幣経済があるという中で、本来は価値のある物同士がすごくわかりやすく交換されていたのだと思います。それが、いつの頃からか忘れられ、最初から貨幣経済の時代に生まれた私たちは、なぜかお金を持っている人が偉いという、不思議なヒエラルキーの下に生きてきたのではないかかと感じたのです。

だから、「お客さんががこの価格で欲しいと言っているから、この価格がいいからこの価格で作ってください、そのためにはあなたもっと安くして安く作る努力をしてください」ということで、市場価格というものが決められていた時代もあるそうです。和えるはそれとは真逆で、職人さんに「いくらだったらこれを作り続けられますか」、「いくらだったら後継者を育てられますか」と聞いて、一緒に考えるところから考えるところから始まるんですよ。それで、そこに関わるデザイナーさん、印刷会社さん、箱屋さん、それから私たち、みんなが継続することができ、生きていくのに必要な分を考えて、その結果として価格が決まるんですね。

でも、決して法外な価格を上乗せしているわけではなくて、けっこう正直ベースで作っています。私たちは、作る人もそれを買う人も、フラットな関係であるべきだと考えています。自分では作れないから職人さんが作ったものを買わせてもらうし、職人さんのほうでも、作ったものを買ってもらわないと自分が他に必要なものが買えない。

そういう考え方を、私たち和えるは先人の知恵から学び、日々取り入れています。お手入れをすれば永く使える。使えば使うほど、なじんできて良くなる。着物が着られなくなったら、仕立直して子どもの着物にして、それから布おむつにして、雑巾にして、朽ち果てるまで使うわけです。私たちの先人は、そういうことを当たり前にやっていたわけで、それをもう一回やってみようかなと思ったので、ある意味ではこの価格は安いんだと私たちは考えているんです。

そういうことを、私たちは先人から学んだんです。着物が着られなくなったらそれを子供の着物にして、それから布おむつにして、雑巾にして、朽ち果てるまで使うわけです。私たちの先人はそういうことを当たり前にやっていたわけで、それをもう一回やってみようかな、と思ったので、ある意味ではこの価格は安いんだと私たちは考えているんです。

できないものをできるようにすることこそが仕事

本荘: 次に遠藤さんのお話なんですが、初めての商品開発で、パッケージを窒素充填したりとか、徹底的に最高のあられを作るということで、すごく大変だったんですよね?

遠藤: そうですね。販売すると決めてから実際に販売にこぎ着けるまでに1年半くらいかかっているんです。職人さんに「都会の人は核家族化が進んでいるので、今まで通り一斗缶にガサッと入れたあられを売っていると湿気てしまう、10cm四方の小さな袋にフレッシュさを保ちつつ窒素と一緒に封入してください」と言ったんですが、そうしたら首を傾げるばかりで声も発してもらえず、追い返されてしまったんです(笑)。基本的に私は人の気持ちは変えられないと思っているので、だったら私が新たに小さな袋にパック詰めしてくれる別の工場を探そうと思って、それで1年半かかってしまいました。

本荘: そこまでして最高のあられを作ろうとした意志はどこからきているんですか? 時間もかかれば苦労もするしカネもかかる。「もうちょっと妥協したらもっと簡単にできるし、どうせお客さんなんて、そこまでわかんないじゃない?」みたいな悪魔の声がこの辺で囁くものじゃないですか(笑)。

遠藤: でも、その面倒くさいことにこそやり甲斐があるというのと、できないものをできるようにするということこそが仕事なのかな、と思っているんです。今までと同じものを作っているのでは、やっぱり工場も売上が伸び悩んでいると聞いていましたし、客層も70代になってきて歯が悪くなってあられが噛めなくなってきているとかいろいろ聞いていました。だったらこの先、長い目で見て工場が生き延びる道は、若い人や海外の人に売るしかないのかな、これは何としてでもやり遂げるしかないかな、と思いました。