ソフトバンクが総務省の「SIMロック解除」
方針に猛反発する理由

最も恐れるのはiPhoneユーザーの流出

 2年半に及ぶ事実上の猶予期間を経て、携帯電話各社が利用者に専用の携帯電話機の購入を強いることを可能にしてきた「SIMロック」の解除が、実施へ向けて動き出した。

 だが、総務省が4月2日に開催した関係者のヒアリングでは、携帯電話会社や電話機メーカーの抵抗の根強さも浮き彫りになった。

 中でも特に激しい抵抗を見せたのは、光ファイバー網を使ったブロードバンド通信などの世界で声高に競争促進を訴え、NTTグループにネットワークの開放を訴えてきたはずのソフトバンクグループだった。

 専門家の間では、国内での販売を独占し、ソフトバンクの虎の子商品になっている、米アップル社製のiPhoneのユーザーが、ネットワーク品質の高いとされるNTTドコモなどライバル会社に乗り換える動きを阻止する狙いがあるとの見方がもっぱらだ。

 懸案のSIMロックの完全解除を実現し、電話機選びの選択肢の拡大を達成できるのか、原口一博総務大臣らの手腕が注目を集めることになりそうだ。

猛反対したソフトバンク副社長

「SIMフリー端末が市場に出ることが望ましいと総務省が言うのならば、協力しましょう。しかし、SIMロック端末を禁止するというのならば、絶対に反対です」――。

 総務省が4月2日に開催した「携帯電話端末のSIMロックの在り方に関する公開ヒアリング」で、ソフトバンクモバイルの松本徹三・取締役副社長はこう主張して、最後まで、SIMロックの解除義務化に抗う構えを崩さなかった。

 同氏が、この最後の発言を口にしたとき、ヒアリングの終了予定時間はとっくに過ぎていた。他の意見陳述者が締めの言葉を口にし終えた後で、それまでに何度も発言した松本氏はまだ言い足りないとばかりに発言を求めたのである。しつこく強い口調で議長の内藤正光総務副大臣に詰め寄る松本氏の姿は、同社の並々ならぬ反対の決意を伺わせた。

 ちなみに、出席各社の主張のポイントを記しておくと、次のようになる。

「解除の影響をご理解いただいたうえで、お客様に判断をいただくことが基本だ。利便性や公正競争を確保する観点から、携帯4社が歩調を合わせて取り組む必要がある」
  (NTTドコモ)、

「端末が変われば、メリットが出て来る可能性はある。しかし、メーカー主導でコストをかけて作った端末が流通している間は介入しないでほしい」(KDDI)、

「SIMロックに関する議論は勘違いだらけ。世界市場における日本の電話機メーカーの不振はSIMロックと無関係。消費者についても、利便性向上より、デメリットのほうがはるかに大きい」
  (ソフトバンクモバイル)

「利用者に選択肢を提供できる形のSIMロックフリーの考え方には賛成だ。新しい端末市場が国内に誕生すれば、メーカーやプラットホーム事業の国際的な競争力の向上にも役立つはず。ただ、利用者保護などの面で政策的な後押しも必要になる」(イ―・モバイル)

「ユーザーが負担するコストの削減に役立つ可能性がある」(日本通信)

「現状では、SIMロックを外しても、端末の機能や各社のサービスの間の互換性が乏しく、ユーザーの利便性向上には役立たない。デメリットのほうが大きいので、慎重な対応を望んでいる。ただ、そういうSIMフリー端末の市場が誕生するならば、メーカーとしてそういう製品も供給していきたい」(情報通信ネットワーク産業協会)

「個人情報管理などに万全を期したうえで、早急に実現すべきである」
  (東京都地域婦人団体連盟)、

 といった具合だ。

 こうした中で、内藤副大臣は、「スマートホンについては、SIMロック解除が可能ということか」などと質し、各社の譲歩の余地を明らかにしようと試みたのだった。

 翌日の新聞報道を総合すると、総務省はこの日のヒアリングを通じて「一定の合意を得ることができた」という立場をとっているようだ。夏までにガイドラインを策定し、年内にもSIMロック解除を実現する方向で検討に入ったという。

 欧米に目を転じると、法律で厳格に実効性を担保しているかどうかは国によって異なるが、米、英、仏の3ヵ国では、電話機の購入から半年程度をめどに、携帯電話会社や携帯電話機メーカーの競争促進の観点、利用者の選択肢を広げる観点から、SIMロック解除を定着させているという。

 そういう意味では、日本だけが、携帯電話会社によるユーザーの囲い込みを容易にするSIMロックを容認しているのは、行政の消費者軽視、携帯電話会社との癒着と受け止められかねない問題と言える。

 今年10月のNTTドコモを頭に、今後、携帯電話各社は相次いで、次世代携帯電話サービス(LTE)を開始する計画を持っている。

 そして、このLTEは、使用する周波数の帯域など様々な面で、現行の第3世代携帯電話よりも各社の互換性が高まる特色がある。このことは、SIMロック解除にとって追い風であり、SIMロックは解除の好機を迎えつつあると言える。

 そこで焦点になるのは、SIMロック解除について、どこまで強い強制力を確保できるかという問題である。

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