元経産官僚の等身大の脱官僚体験記 宇佐美典也・著『肩書きを捨てたら地獄だった』

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol051 読書ノートより

読書ノート No.156

●宇佐美典也『肩書きを捨てたら地獄だった』中公新書ラクレ、2014年12月

元経産官僚の宇佐美典也氏による脱官僚体験記だ。世の中の俗物たちの姿が等身大に描かれていて面白い。もっとも面白かったのが以下のくだりだ。

<この頃から「字佐美はただの馬鹿。その証拠に、満足に暮らしていくことすらできていない」などと吹聴する人が現れました。事実ですし、言わせておけばよかったのですが、プライドが拾てきれていなかった私はムキになり、「一発逆転」を模索していきます。

少し話が遡りますが、私は役人時代の最後の2~3年、数百億円の研究開発予算の配分を預かる立場にいました。「日本にはもっと挑戦者が必要」などと考え、特定の企業に偏りがちだった予算配分を見直し、時には省内の反対を押し切ってでも新進気鋭の研究者やベンチャー企業と積極的にプロジェクトを企画して、チャンスを創り出していました。なかにはそれがきっかけで、学界やビジネスで注目されるようになった人もいます。そうした過去の人脈に、私は逆にチャンスを見出したのです。

そこで仕事に困窮しだした日々のなか、「あのときのやりとりで恩を感じてくれているはず」などと考え、そういった施策に関係した研究者や企業の技術者を訪ね、役人時代とは逆に私の側から事業アイデアを持ち込むことにしました。具体的なビジネスとして、たとえば官僚時代に担当していたプロジェクトから生まれた有望技術の特許を買い取り、ライセンスを海外の企業に売り込むことなどを考えました。きっとこの人たちなら「経済産業省の字佐美」でなくとも力を貸してくれるに違いない、そんな思いを抱きながら。

しかし実際にはようやく会う機会を得ても、大半は「退職した宇佐美と接触すると経済産業省から睨まれてしまうのではないか」と腫れ物に触るような対応がほとんど。これには非常に落胆しました。

そんななか、少数ですが「官僚時代にお世話になったし、話だけ聞いてあげよう」と時間を割き、前向きな姿勢を見せてくれる有り難い方もいらっしゃいました。この計画に出資を検討してくれる方まで見つかり、「これで一発逆転だ!などと浮かれていました。

しかし所詮は「馬鹿にされるのが嫌」という幼稚な動機から始まったこと。いざ具体化していくと、準備が足りず、詳細な部分で穴が指摘されるようになります。

慌てて「そういった細かいことはこれから一緒に考えましょう」などと切り返した際には、「君はもう経済産業省の人じゃない、ただの人。なぜ我々がそこまで親身になる必要がある?満足な計画も無いままに官僚を辞めるなんて、本当に愚かだ」と半ばあきれた顔で諭されてしまいました。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol052(2014年12月24日配信)より

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・榎本まみ『督促OL修行日記』文藝春秋、2012年9月
・佐藤優『外務省ハレンチ物語』徳間文庫、2011年3月
・今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』文春新書、2012年11年

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