「親しみを増すことで熟成する関係の価値を信じたい」---ビジュアルコミュニケーションアプリ「Picsee」運営のディヴィデュアル代表・遠藤拓己氏に聞く
Picseeを運営する株式会社ディヴィデュアル代表取締役・遠藤拓己氏

「言葉よりも早く、たくさん伝わる」

これは12月24日にディヴィデュアルがリリースしたビジュアルコミュニケーションアプリPicsee(ピクシー)」のタグラインだ。Picseeはクローズドな環境で親密な人たちと写真を媒介にしたコミュニケーションができるiOSアプリ。

最大の特徴は、親しい友だちと共有できるカメラロールだ。共有するカメラロールはクローズドな環境で作られるため、プライベートな関係で利用できる。グループのメンバーがそれぞれに撮影した写真は、共有のカメラロールに次々に保存されていく。

また、Picseeには通常のカメラアプリでは定番となっているフィルター機能がない。オープンかつソーシャルなサービスでは、写真を加工したり、演出したりすることもあるが、Picseeでは何気ない日常の断片を飾らずに交換しあうことで、親密な関係を醸成することにつなげる。親しい間柄での利用はもちろん、プロジェクトやイベントといった大人数での活用など、ユーザーが新しい使い方を生み出すこともできそうだ。

人間らしいコミュニケーションを通じて親密さを深めるこのサービスは、どのようにして生まれたのか。そして、どこを目指すのか。Picsee上でおこなわれるビジュアルを中心とした非言語的なコミュニケーションは国境を問わないため、世界に広がる可能性をもつ。

Picseeを運営する株式会社ディヴィデュアルは、パリを中心に欧州でメディア・アーティストとして活動していた遠藤拓己氏と、NTT Inter Communcation Centerのキュレーターだったドミニク・チェン氏が2008年に創業した企業。今回、同社代表取締役・遠藤氏に話を聞いた。

写真共有を超えた新しいコミュニケーションの可能性

Picseeは12月にリリースされたが、アイデアの着想は2年前の2012年にさかのぼる。ディヴィデュアルでは当時、2008年にリリースした、「へこみ」や「悩み」を投稿するとみんなが「なぐさめ」を書き、それに対し「ありがとう」を送ることができるコミュニティサービス「リグレト」を運営していた。約60万人のユーザーを抱え、数億回の「ありがとう」が送られるまでに成長し、サービス自体は大いに盛り上がっていた。

時を同じくして、スマートフォンが全世界に急激に普及し始めていた。「リグレトの運営経験を生かしながらも、全世界の人々に使ってもらえる骨太なサービスを作りたい」。新サービスのための合宿を重ねるなか、共同創業者のドミニク・チェン氏から出されたアイデアのひとつがPicseeの原型となるものだった。

2012年にドミニク氏に子どもが生まれ、夫婦で写真を撮影する生活が始まり、半年の間にそれぞれのiPhoneに4000枚ずつの写真が記録された。しかし、ここで課題に気付く。お互いにシンプルに共有できる手段がなかったのだ。オンラインストレージサービスを利用するという選択肢もあるが、たとえば親や友人とも共有したいとなると、それを実現できる簡単な手段はほとんどない。

この課題をもとに「それぞれが自分のスマートフォンで写真を撮影すると共通の場所に自動的に保存される」サービスのアイデアをドミニク氏が提案。社内ブレストが活発になるなか、遠藤氏が「いっそのことカメラロールごと共有できないかな」とつぶやいたことから、CTOの山本興一氏が1時間でプロトタイプを制作し、すぐさまチームで使いはじめた。すると、単なる写真共有を超える感触があった。新しいコミュニケーションの可能性が見えたのだ。

Picseeのアイデアが出たときのノート
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