この著者に聞け
2015年01月04日(日) 田村耕太郎

田村耕太郎【第4回】世界における日本経済のシェアの低下とともに聞こえる「アジア時代」の足音

『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』より

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Photo by Thinkstock

シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』(PHP新書)第1章 パラダイスの終わりより抜粋

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隠れ介護1000万人超の恐怖

日本で進む高齢化問題は、誰にとっても他人事ではない。今後、様々なかたちで我々の人生を蝕んでくる。「隠れ介護1300万人の激震」。これは、日経ビジネス2014年9月22日号の特集見出しだ。東レ経営研究所の渥美由喜氏によると、隠れ介護(本人や配偶者の親が要介護状態だがその事実を会社に伝えていない人)が既に1300万人いるという。

1300万人の働き盛りの日本人が親(義理の親を含めて)の介護問題を会社に直接相談できずに苦しみ悩んでいるということは、日本の就業者数(6357万人:総務省統計局調査)のうち、5人に1人がこの問題を抱えているという高い割合だ。そしてこの数字は、これから急速に悪化していくのは間違いない。

すると、ほとんどのサラリーマンが介護の負担を負いながら働いていくことになる。中には子育てと介護を同時に行わなければならないビジネスマンもたくさんいるだろう。問題は介護に従事する人数が単に増えていることだけではない。会社の中枢が介護で忙しくなりつつあるということだ。会社の主力である役員・管理職で過半を超える59%の企業幹部が親の介護問題を抱えているという。

費用負担も深刻だ。給与が伸び悩む中、介護を抱える社員のうち、3人に1人は年間100万円超の出費をしているという。これは大企業サラリーマンでも馬鹿にならない出費だ。そして、この負担は高齢化が進み要介護度が上がるにつれて増え続ける可能性が高い。

介護の負担が増えすぎて会社の業務をこなせなくなっている社員も増えているようだ。自身の職場で誰かが介護離職したため支障が出たという人が既に35%もいる。介護離職は辞めた方にも辞められた方にも負担が大きい。辞めた人は家計収入がなくなるので、貧困サイクルに入っていく場合が少なくない。辞められた職場は業務に支障が出る。

調査対象読者のうち、7割が現行の介護支援制度に不満を持っているという。高まる不安の内容は、「仕事との両立」「介護費用」「介護施設問題」等である。高齢化は財政的な問題であるばかりではない。すでに"隠れ介護"というかたちで企業社会に大きな損失を出しつつある。

もちろん、財政的な課題も深刻化する一方だ。厚生労働省によると、2013年の介護保険の総給付額は9兆4000億円。介護保険が始まった2000年が3兆6000億円なので介護保険の総費用は3倍近くに膨れ上がった計算だ。

2025年には給付額(総費用)は現状の倍以上の21兆円に膨れ上がると見られる。国も介護費用の削減に必死だ。2015年からは改正介護保険法が施行される。若い世代はまだ他人事と思うかもしれないが、時間の問題だ。我が国では、これから高齢化がもたらす介護という深刻な課題を我々全員に突き付けていくだろう。

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