田村耕太郎【第2回】人口減少と高齢化は、財政や経済のみならず安全保障にも影響を及ぼす
『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』より

シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』(PHP新書)第1章 パラダイスの終わりより抜粋

第1回はこちらからご覧ください。

 人口が減る恐怖

表は、国土交通省が発表している人口予測である。日本の人口の増減が、1900年から2100年までの200年間で、ジェットコースターのように上下する可能性がある様子が描かれている。

まず注目すべきは、年金や医療を扱う厚生労働省ではなく、なぜ国交省が人口問題にここまで熱心に発信を続けるのかということだ。私は参議院国土交通委員長時代、国交省の皆さんと親しく仕事をさせていただいたので、彼らの危機感がよくわかる。人口問題は、彼らの所管である国土計画に大きな影響を与えるのだ。人口が減れば、住宅、鉄道、道路、空港、港湾の整備保全に大きく影響する。

チャートには日本全体の人口予測しか書かれていないが、これが日本全国で一様に起こるのではない。東京への一極集中は当面続き、地方都市の人口は全体よりかなり早いペースで減少し、その後巨大化した東京も急速に高齢化と人口減少を迎えることになる。

地方都市では限界集落が増え、そこへのライフラインの整備をコストの観点からどうするか、国家として議論しなければいけない。限界集落へのライフラインと言われても東京生まれ、東京育ちの人などにはピンと来ないだろうが、私の故郷鳥取県ではすでにだいぶ前から始まっている議論である。人里離れた山奥にあった集落。そこに通じる橋や道路は老朽化しており、とくに橋は架け直さないと崩落の可能性があるものもある。そのコストは数億円。しかし、その先に住んでいる人は十数名、または数名。そんなケースがあるのだ。

これは鳥取県固有の問題ではなく、同じような状況は日本全国に存在するもので、その数は今後急速に増えていく。2年連続して消費税を引き上げないといけないほど国家財政がひっ迫している我が国で、そんな負担ができるはずがあろうか。当然ない。その警告を、国交省は政治や国民に発信しているのだと思う。

本題に戻るが、経済予測というものが難しい一方で、人口予測ははるかに簡単だ。経済予測は四半期ごとの修正がつきものであるほど難しい。経済予測が高等数学の世界だとしたら、人口予測は小学校の算数のようなものである。子供を産む可能性のある人の人口、出生率、平均寿命、大体この3点がわかれば、よほどの長期でなければほぼ正確に人口は予測できる。

もちろん今後の医療やバイオテクノロジーの発達で平均寿命が継続的に延びたり、子供を産める女性の年齢の上限が上がる可能性はあり、人口は想定より減らないかもしれない。それを考慮しても、私は国交省の人口予測、中でも低位予測に、現実は近づいていくのではないかと思う。人口は国力の巨大な要素だ。日本の未来を予測する視点で、人口を考えてみてほしい。