プーチンがソチで行った国家戦略に関する重要な演説

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol051 インテリジェンス・レポートより
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【事実関係】
11月26日、ロシアのソチ市でプーチン大統領が演説を行った。

【コメント】
1.
日本のマスメディアではあまり報じられていないが、ロシアのプーチン大統領が11月26日、ソチ市において今後の国家戦略に関する重要な演説を行った。露国営ラジオ「ロシアの声」の報道をもとに、この演説の真意を読み解いてみる。

2.―(1)
<ロシアのプーチン大統領は26日のソチ演説で、国際政治におけるロシアの立場を今一度はっきり示してみせた。演説の政治パートのエッセンスを集約すれば、次のようになる。「モスクワは誰のことを攻撃する気もない。しかし、地政学的謀議に巻き込まれる気もない」。

最近のプーチン大統領演説は全てそうであるが、このソチ演説も、欧州における激動、とりわけ、ウクライナ問題というプリズムを通して見る必要がある。

ロシアは、プーチン大統領によれば、好んで争いを起こすような姿勢は全く見せてはおらず、基地を包囲するなどといったことも、全くしていない。しかし、自分の国と、友人国とを守るためには、あらゆる手立てを尽くす用意がある。

「我々は誰のことも脅かしてはいない。そして、どこの誰がどう画策しようとも、我々はいかなる地政学的ゲームにも、謀略にも、ましてや紛争にも、参加する気はない。一方で、ロシアの主権と一体性、ならびに同盟国の安全は、確実に守らなければならない。そして、特に次のことに注意を促したい。国防分野の課題をクリアするに際しては、複合的なアプローチと、国家権力内の全ての機関の努力を結集することが必要である」>(11月30日「ロシアの声」日本語版ウェブサイトより)

2.―(2)
プーチンはウクライナ危機以降、米国、EUによる対ロシア封じ込め政策が独自の戦略に基づいていると認識している。すなわち、ロシアが「ユーラシア共栄圏の建設」という、「ヨーロッパとアジアの間に存在するロシアはユーラシア国家で独自の掟と発展法則を持っている」という地政学に基づき国家戦略を展開しようとしているのに対し、欧米がそれを封じ込めようとしていると認識しているのである。より具体的に言うと、ロシアはウクライナをユーラシア共栄圏の一部と考えるのに対し、欧米はウクライナをヨーロッパの一部と見なすという、地政学的見解をめぐるイデオロギーの差異が対立の原因になっているということだ。

2.―(3)
プーチンは軍事力を強化することによって、この危機を克服しようとしている。

<プーチン大統領はソチでロシア軍人らと軍の発展および軍事計画について一連の重要な討議を行った。大統領は、今後一、二週間のうちに、ロシアの軍事ドクトリンの改訂版が発表される、と述べた(引用者註:12月22日現在、改訂版は発表されていない)。ロシアの現行のドクトリンは2010年に採択されたもの。しかし、NATO(引用者註:北大西洋条約機構)の侵略的性格が顕著化していること、米国MD(引用者註:ミサイル防衛)システムの欧州およびアジア展開、ウクライナにおけるNATOおよび米国の冒険主義といったことが、軍事的な課題や地政学的脅威の性格を一変させてしまった。>(前掲「ロシアの声」より)

地政学的環境の変化に軍事力で対抗するというプーチンの発想は、帝国主義そのものだ。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol051(2014年12月24日配信)より