HONZ現代ビジネス
2014年12月26日(金)

『えんぴつの約束』感動の中にある戦略 一流コンサルタントだったぼくが、世界に200の学校を建てたわけ

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レビュアー:山本 尚毅

発展途上国に学校を創る、というありきたりの青春話である。日本でも現役の医大生が、150万円で学校を建てられるというポスターを見て、その偶然の出会いから学校を建てたストーリーが話題になった。チャリティーイベントを開き、寄付を集め、カンボジアに学校を建てた。そして、それは向井理が主演した『僕たちは世界を変えることはできない』という映画にもなった。

本書の主人公アダム・ブラウンのストーリーもどこかで聞いたかのような、ありふれたものだ。それはインドを旅したとき、子どもに欲しいものを聞いたときのことだった。

"「えんぴつ」「ほんとに?」"

この会話から、ペンシルズ・オブ・プロミスという組織名が生まれた。後に何度もアダムが語ることになるストーリーのはじめの一歩である。その後、その出来事が頭に残り続け、一流コンサルティング会社を一時休職し、何度かパーティーを開いて資金を集め、学校を建てた。ここまでは、向こう見ずな若者が、自らの情熱と度重なる偶然を糧に、発展途上国に学校を建てた数多ある泥臭いストーリーの1つにすぎなかった。

しかし、アダムはそこに留まらず、たった5年で、アジア、南米、アフリカに250以上の学校を建設した。今では90時間に1校の割合で新しい学校が生まれている。この大きな飛躍には、明確な戦略があった。

人に話したくなるような(すげぇ)ストーリー、美しく完璧なバックエンドを持つウェブサイト、そして完璧なスタッフとインフラ、この3つの基盤を作り上げることに集中したのだ。そして、基盤ができあがるまでメディアへの露出をできるかぎり断った。

非営利組織やスタートアップは1つの成果をあげるとすぐにメディアに取り上げてもらい、自分たちの活動や組織を早く知らせ、資金調達したいと焦ってしまうが、その短期的で安易な誘惑を、合理的に肯定しない人間的な強さがアダムにはあった。自分の語りたいストーリーができあがるまで、安売りしない忍耐強さが抜きん出ていた。

その間、何もしないでいたわけではない。ソーシャルメディアを巧妙に活用することで活動を拡げていった。奇しくも、facebookのマーク・ザッカーバーグと同世代、全米に広がっていくソーシャルメディアのムーブメントに乗っかった。具体的な活用法はここでは省くが、本格的なメディア露出をしていない2年半の間に、15校もの学校を建設したという結果が巧みさを物語っていると思う。

3つの武器、最初に作り込んだのは、すげぇストーリー。

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