イギリス
ヨーロッパの国は一癖も二癖もある! 30年ぶりのイギリスで感じた大英帝国の雰囲気と階級社会の価値観
〔PHOTO〕gettyimages

30数年ぶりにイギリスに行った。シュトゥットガルトからロンドンまでは1時間40分ほどだ。ロンドンはEU最大の都市で人口830万人。周辺地域を含む都市圏としては1500万人を超える。ヒースロー空港の上空から見下ろしたロンドンの町は、建物が地平線まで果てしなく広がっていた。こういう風景は日本ではお馴染みだが、ヨーロッパではなかなか見ることができない。

ドイツは、最大の都市ベルリンでも人口は340万。都市圏としては600万人余りだから、ロンドンとは比較にならない。ちなみに私の住むシュトゥットガルトは人口が60万弱。近隣地区を含めても100万ちょっと。ドイツ6番目の都市とはいえ、かなり田舎っぽい。

価値観をほとんど修正せずにきたイギリス

さて、ロンドンに話を戻すと、この町は外国人観光客の数が世界一だ。私がロンドンに着いたのは土曜日の朝で、この季節には珍しく快晴、しかも暖かかった。日の光に誘われたのと、クリスマス前のショッピングが重なったのだろう。街は、ロンドン市民全員が出かけてきたかと思うほどの混雑ぶりだった。

そこに、右も左もわからず、しょっちゅう立ち止まっては地図を広げたり、写真を撮ったりするはた迷惑な観光客(←私)がたくさん混じって、混乱度を高めている。幅広の歩道はびっちり人で埋まり、夕方にはにっちもさっちもいかない鮨詰めならぬ、フィッシュ・アンド・チップス詰めとなった。

ロンドンの中心街で感心したのは建物の壮大さだ。それも古めかしい、大英帝国を思わせるような威風堂々とした建物である。この国の人たちは、何一つ変えるつもりはないらしい。それどころか、この前世紀、あるいは、前々世紀を思わせる壮大な建物に大いなる誇りを持っているということが、ひしひしと感じられた。ロンドンはドイツ空軍の爆撃を受けたので、壊れた建物もあったはずだ。しかし戦後、すべてを元通りに復元し、壊れたことなど忘れてしまった。

イギリス議会の映像を見ると、バッハやハイドンのようなふさふさの鬘(かつら)を付けた人々がいる。いつも不思議に思っていたが、ロンドンの建物を見ると、少し理解できるような気になる。

それに、イギリスがEUに片足以上は突っ込みたがらないのもよく分かる。EUでは、EUのあまたの法律を押し付けられるので、居心地が悪いのだ。だから、イギリスはそれに抵抗し、常に例外を作ることに専念してきた。

この国の人たちは、価値観をほとんど修正せずにここまで来たのではないか。他人の価値観に合わせるのではなく、他人がイングランド人のそれに合わせればよい。そして、その価値観の多くが、いまだに大英帝国の物ではないかと思うほど、古めかしく思えた。

イギリスには、王族がいて、貴族がいる。ドイツは第一次世界大戦で負け、カイザーは慌てて逃げてしまったし、貴族制も廃止された。とはいえ、実は彼らの末裔は今日もアッパークラスとして存在し、その特典をちゃんと意識し、巧みにそれを保っているのだが、しかし、対外的にはそんなものはないふりをしている。そして国民も、政治家に元貴族が少ないこともあり、ドイツには階級などもうないと思っているのである。

しかし、実際は、西ヨーロッパはどこもかしこもいまだに階級社会だ。とくにイギリスという国では、ちゃんとそれが目に見える。アッパークラスは、アッパークラスとして存在し、それを隠している風もない。おそらく隠す必要がそもそもないのだろう。

王族の結婚式、とくに、ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚、ジョージ王子誕生、その生育といったニュースは、フィーバーぶりが凄い。イギリスでこういうことにフィーバーしているのはミーハーだけだという話も聞くが、ミーハーをバカにしてはいけない。

彼らが王族に憧れ、それを別段不平等とも思わず、その存在を支持している限り、イギリスの中枢にいるアッパークラスの人々は、18世紀から延々と続いている特権階級の空気を堂々と呼吸していられるのである。

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