「若者にとっての介護業界の入り口をつくり、課題解決にかかわる人を増やしたい」---Join for Kaigo代表・秋本可愛
株式会社Join for Kaigo代表・秋本可愛氏

長い間、日本において大きな課題だと言われ続けている高齢化社会。厚生労働省のデータによれば、65歳以上の高齢者数は、2025年には3657万人、2042年には3878万人とピークを迎える。また、2025年には団塊世代が75歳以上となるため要介護者が急増し、介護士が100万人以上も不足すると予測される。

この課題解決に向けて高齢者にアプローチすることもあれば、これから介護者になる可能性の高い若者に向けてなにか働きかけることもできるだろう。今回は後者の取り組みについて触れたい。

1990年生まれで、超高齢社会を創造的に生きる次世代リーダーのコミュニティ「HEISEI KAIGO LEADERS」を運営する、株式会社Join for Kaigo代表・秋本可愛氏(24)に話を聞いた。

秋本氏は大学2年生の春に起業サークルに参加し、そのなかで結成したプロジェクトチームで認知症予防に繋がるフリーペーパー「孫心(まごころ)」を発行。このフリペは、全国の学生フリーペーパーコンテスト「Student Freepaper Forum 2011」にて準グランプリを受賞した。大学3年生からは介護現場でアルバイトをするようになる。

大学卒業後の2013年4月、株式会社Join for Kaigoを設立。超高齢社会を創造的に生きる次世代リーダーのコミュニティ「HEISEI KAIGO LEADERS」を運営しいる。介護福祉に関心をもったきっかけから、高齢社会の課題、若者のコミュニティづくりの目的などを聞いた。

フリーペーパー「孫心(まごころ)」

認知症予防に繋がるコミュニケーションツールとしてのフリーペーパー

山口県出身の秋本氏は、大学進学で上京。専修大学商学部マーケティング学科に進んだが、やりたいことが明確というわけではなかった。そのため、オールラウンドサークルに入ってスポーツや飲み会、運動会を企画するなどしてキャンパスライフを楽しんでいたという。「遊びとバイトが生活の中心で、授業はそっちのけという状況だったので、このまま大学を終えるのはまずいと漠然と思うようになりました」。

そんななか、学外の活動に参加する転機が訪れる。たまたまmixiのタイムラインで起業サークルFor Successの新歓の誘いを見つけ参加したことだ。このサークルでは、プロジェクトチームを組み、事業をおこないながら起業を学んでいくのだが、秋本氏が入った4人チームのうち先輩2人の祖母が認知症だった。

チーム結成して1年以内にメンバーは2人になるが、新しく美大生がチームに加わり、大学3年生の春、認知症予防に繋がるフリーペーパー「孫心」を発行。「孫心」は、「認知症予防に繋がるコミュニケーションツール」というコンセプトのもと、高齢者と家族や介護スタッフが一緒に読むことでコミュニケーションがうまれるフリペだ。秋本氏と美大生メンバーの1人は、制作途中で介護現場でのアルバイトを始め、発行ごとにメンバー内で議論し、コンテンツのブラッシュアップ重ねた。

そうして制作された「孫心」の第4号は全国の学生フリーペーパーコンテスト「Student Freepaper Forum 2011」で準グランプリを受賞するなど高い評価を受けた。同コンテスト内では、R25元編集長・藤井大輔氏が「コンセプトが明確で、フリーペーパーである必然性とビジネスの拡張性がある」と総評している。認知症予防としての回想法を取り入れたストーリーや穴埋めクイズなどをコンテンツとし、現場でコミュニケーションツールとして使えるものを意識したという。しかし、事業として継続・発展させることのむずかしさ、制作することが目的化するようになったと感じることもあり4号目で廃刊した。

その後も、介護の現場でのバイトを続けるなか、認知症を超えて介護全体に視野が広がるようになった。バイト初期ではフリペ制作のため、認知症がどんなものなのかに興味を持っていたというが、実際に目の前で見たことでショックを受けることもあった。「たとえば、何度も同じことを言ったり、徘徊したり、ときには自分の便を食べてしまうこともありました。認知症という当人の問題だけでなく、家族からの虐待、介護放棄や介護離職など家族間での問題もあり、視野や関心が広がったと思います」。家族以外にも職員の問題もある。介護職員はかならずしも介護をしたくて来る人だけではないという。

また、「バイトは人材が足りなかったこともあり、大学卒業後の4月2日まで続けた。2年間働くなかで職場歴が上から2番目になった」というエピソードもあり、入れ替えの激しさや辞める人も多さなど問題も垣間見える。

「現場ではとても人間力を問われます。認知症の人で自分の思いを言葉で表現できない人ががなにを考えているのかを汲み取るためには、自分を無にしてその人と向き合わなければなりません。そして判断し実行するためには専門的な知識も必要になってきます。また、チームワークも大切ですし、私が働いていたの事業所は基本的に家事もすべてできないといけませんでした。決してだれでもできる仕事ではないと思いましたが、だれでも受け入れないといけない状況は問題の一つだと感じました」

大学3〜4年生にかけて介護のバイトを経験したことで問題意識は広がった。人生の終わりにかかわる尊い仕事をするなかで、次第に介護業界においてなにができるのか、どうすればいいのかを考えるようになる。「夜勤のときには、おばあちゃんと語り合うこともあったんですが、『私は消えたほうがいい』と自分自身が生きていることを責めるんです。なんともやるせない気持ちになりました。人生の終わりがこのままでは嫌だ。もっと幸せな終わり方を増やしたいと思うようになりました」。

2014年12月26日には「HEISEI KAIGO LEADERS 2025 COUNTDOWN PARTY」というイベントを開催
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