勝間和代×渡辺由佳里【後編】「他人の欲求を奪うより、助け合って互いの欲求を満たす"プラスサム"発想でいこう」

小さな親切は「貯金」である

勝間: このプラスサムって、大それたことじゃないんです。「できる親切はしよう」くらいでいい。

私、きのうね、5個入りの薄皮まんじゅうを買ったんです。新幹線の中で食べようと思って(笑)。で、車内で食べようとすると、ふと隣の席の方が気になるわけですよ。私だけ食べるのもアレだなと。そこで「よかったら召し上がりませんか」と、1つさしあげた――。それだけの話なんです。

渡辺: そういう親切って、何度もやって慣れないとなかなかできない。習慣ですよね。

勝間: でも、後ろめたさを感じながら薄皮まんじゅうを5つ食べてもおいしくないじゃないですか。それよりも、1つ減ってもいいから気持ちよく4つ食べられるほうがいいでしょう(笑)。

渡辺: (笑)。うん、本当にそう。だから何でもいいから小さいことで、自分が気持ちよくなることをやってみるっていうのが大切ですよね。人間関係もそうですね。本当に身近な人を助けてみて、その人に助けられてみるっていう、その気持ちよさを少しずつ拡げていく。

勝間: 助け合う余裕のない人にまで、助け合いを強要するのはよくないです。でも変な話、そこでおまんじゅうをあげることで、5年後か10年後に、新幹線で隣の人からおまんじゅうやミカンをもらえることだってあるかもしれない(笑)。

渡辺: (笑)。私は地元のスーパーで、店員の方からバカンスの話を聞いたりして仲良くなることが多いんですが、アメリカでも店員の方と親しくコミュニケーションをする人はあんまりいないんです。で、ある日、その店の鮮魚コーナーでアサリを買おうしたら、あまり新鮮なものがなかったんですね。そこで、いつも挨拶する仲の店員さんに「今日入荷したアサリはある?」 と訊いてみたら、「あなたのためだったら」と、わざわざ奥から出してくれた(笑)。別にそのために仲良くしているわけじゃないけれど、そういうことですよね。ビジネスでもそういう関係はあるはず。

勝間: 私は「貯金」だと思っているんですよ。

渡辺: 貯金。

勝間: 信頼残高という人もいます。何か親切をしておくと、死ぬまでにはどこかで返ってくる。私に返ってこなくても、子供や孫に返ってくればいいかなと。「究極の利子」ですね(笑)。

渡辺: 私自身も50を過ぎると、返ってこないとしても人に何かをしてあげられる人生のほうが、面白いし楽しいと思えるようになってきました。「みんなで共有してパイを拡げる」というプラスサムの発想、ぜひもっと広めていきたいですね。今日はありがとうございました。

勝間: こちらこそ今日は楽しかったです。ありがとうございました。
 

(おわり)

勝間和代(かつまかずよ)
1968年、東京都生まれ。経済評論家。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析取締役、内閣府男女共同参画会議議員、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。
渡辺由佳里(わたなべゆかり)
エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家。兵庫県生まれ。助産師、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)など。糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)はベストセラーに。ブログ「洋書ファンクラブ」 http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/

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