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追徴課税「60億円」をポンと一括払い 国税が見つけた 旧トステム創業家「遺産220億円」のありか

脱税か、節税か

「申告漏れのニュースには驚きました。だって、追徴課税が60億円ですからね。亡くなった潮田健次郎さんをはじめ、潮田家のみなさんは生活ぶりこそ質素でしたが、やっぱり大金持ちだったんですね。お嬢さんの自家用車はオレンジ色の国産の小型車ですし、外国人のご主人は年季の入った原付バイクで移動。このあたり(新宿区内藤町)は高級住宅地で、最近は弁護士や医者、野球選手が多く住んでいるのですが、そういった人たちは高級外車を乗り回しています。それと比べると、お嬢さんの国産車のほうがよほど目立っていらっしゃいます(笑)」(近隣に住む60代女性)

住宅建材大手のトステム(現LIXIL)創業者の長女(59歳)が父・健次郎氏から相続した遺産をめぐり、国税局から申告漏れを指摘された。その額、なんと220億円。ところが長女は、とてもそんな資産家には見えなかったと周囲は口を揃える。

いったいどのようにして巨額の遺産を隠し、なぜそれが発覚したのか。全国紙国税担当記者が解説する。

「創業者の健次郎氏が'08年から'09年にかけて、保有していた住生活グループ(当時)の株式1347万5000株を売却しました。それで得た220億円を、潮田家の資産管理会社(未上場)に移したんです。'11年4月に健次郎氏が亡くなり、この資産管理会社の株式を長女が相続。彼女は相続財産を資産管理会社の評価額にあたる85億円だとして申告しました。そこに国税は引っ掛かりを感じたんです」

通常、相続税は亡くなった日から10ヵ月以内に支払うことが求められる。長女の納付期日は'12年2月だった。申告書が提出されてから、国税当局は約1年かけて、その内容を精査したと見られる。

「国税は健次郎氏が亡くなってから、潮田家の相続の動向に目を光らせていました。というのも、実は潮田家には以前、健次郎氏の兄・猪一郎氏が亡くなったときに、相続税逃れを画策した『前科』があるんです。今回も似たようなスキームを使うのではないか、と当局は注視していました」(前出・国税担当記者)

遡ること11年前。トステムの会長を務めた潮田猪一郎氏の遺族が、東京国税局の税務調査で65億円の申告漏れを指摘された。猪一郎氏が保有していた同社の株、約120万株を資産管理会社に売却して、財産の評価額を減らしたというのが、その手口だった。今回の申告漏れも、これと類似したケースだという。

「現金を別の会社の株式に換えて、相続財産の評価額を下げる節税は昔からよくある手法で、それ自体は違法ではありません。ただ、国税当局は現金を株式に換えてから、相続するまでの期間が短すぎたと判断したのだと思います。

もうひとつ考えられる問題点は、出資した資産管理会社が『ファミリー会社』だったことです。身内の間での資産のやりとりで、実態は何も変わっていないのに、評価額が220億円から85億円に下がるのは適当ではないと判断したのでしょう」(都内に事務所を構える税理士)

長女側は資産管理会社の価値を、同じ業種で事業内容が類似する上場企業の株価などを参考に85億円と算出したと見られる。

「今回のケースで国税当局は、手法が合法的であっても、当局の判断次第で相続財産の額を算出し直すことができる『伝家の宝刀』を抜いたわけです」(同)

長女側は当初、この指摘を認めなかったため、国税局は過少申告加算税を含めて60億円超の追徴課税を命じる「更正処分」を改めて下した。結局、長女側はこの処分を受け入れ、「異議申立て」を起こして争うことはせず、保有していた財産から60億円をキャッシュで支払ったという。

一般人からは想像もつかない巨額の資産を築いた潮田健次郎氏は、最終学歴が小学校卒でありながら、一代でトステムを東証一部上場企業にまで成長させた立志伝中の人物だ。

敗戦後の焼け野原の中で建具の卸売業からスタートし、アルミサッシ業界に参入。社名を『トーヨーサッシ』として、業界最大手にのし上がる。同社はサッシ事業だけに留まらず、住宅関連の総合企業として、'01年にはINAXと経営統合を行い、社名を『住生活グループ』に改めた。

健次郎氏が一線を退き、長男・洋一郎氏に跡目を譲ったのは、'06年、80歳のとき。そして、その健次郎氏に一人娘として大事に育てられてきたのが、この長女だった。

「高校生の頃から父親にクレジットカードを渡されるなど、何一つ不自由なく育ちました。そして長女は大学卒業後、父親の庇護を離れてパリに渡り、通訳の仕事がきっかけで出逢った、世界的に有名なフランス人音楽家で俳優のピエール・バルー氏と結婚しました。二人は一男一女をもうけて、現在、日本を中心に芸術方面で活動しています。都内屈指の高級住宅地である渋谷・松濤でライブハウスとギャラリーを経営し、新宿御苑裏の邸宅をイベントハウスにして、アーティストや文化人を呼ぶこともあるようです」(全国紙経済部記者)

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