第6回ゲスト:大沢在昌さん (前編)
「どんな賞をもらっても、いざ書き始めたら、『いかに読者を楽しませるか』、それしか考えていない」

〔写真〕峯竜也 〔構成〕小野塚久男 〔撮影協力〕月下

99%のウソと1%の奇跡に、つき合い続けて30年

島地 お久しぶりです。最後にあってから、かれこれ10年ぐらいになりますか。でも大沢先生と最初にお会いしたのは、もう30年近く前ですよね。

大沢 やめてくださいよ。何が「先生」ですよ。ずっと「大沢ッ!」と呼び捨てだったくせに。

島地 今や大先生じゃないですか。「初版作家」といわれていた頃からのつき合いだけど、直木賞をもらう前から、「大沢はそのうち絶対に売れる」とまわりに話していたんだよ。

大沢 おかげさまで、たしかに直木賞はいただきましたけど、受賞が決まった夜のことのこと覚えてますか?

日野 シマジさんがなにかやらかしたんですか?  あ、担当編集の日野です。今日はシマジさんの昔の悪行を遠慮なく暴いちゃってください。よろしくお願いします。

大沢 各出版社の編集者が100人くらい集まって、銀座のクラブで受賞を祝う会があったんですよ。なごやかに歓談していたら、マントを着込んだシマジさんが突然あらわれて、「おめでとう! 大沢。俺の言う通りにやったら直木賞とれただろ。じゃあな!」って、去っていった。「あれは何者ですか?」って、まわりはポカン、ですよ。

日野 人をポカンとさせるのはシマジさんの得意技ですからね。

大沢 この人は昔から滅茶苦茶なんですよ。夜中に電話してきて、「大沢! コッポラの最新映画の原作をお前に頼みたい。すぐ銀座に来てくれ」というんで、よく分からないまま行ってみると大ウソだったり。シマジさんの話は99%がウソだけど、まれに「おお! さすが!」という1%の奇跡が起こるから、たいがいのことは許せてしまうんですよね。

今は雑誌が冬の時代ですけど、シマジさんが編集長だった頃の「週刊プレイボーイ」はおもしろかった。発想がぶっ飛んでいた。いつだったか、コミネ(小峯隆生・元週刊プレイボーイ編集者)が「先生、スケベ光線について聞かせてください!」なんて言ってきたことがありました。