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二宮清純「“ヘタクソ”里崎智也を一流に育てた男」

2014年12月19日(金) 二宮 清純

ムダな“愛のムチ”を排除

新人時代は「盗塁も全く刺せなかった」と振り返る。

 今季限りでユニホームを脱いだ元千葉ロッテのキャッチャー・里崎智也さんは、捕球技術に定評がありました。通算19個(守備出場1018試合)の捕逸数は1000試合以上出場したキャッチャーの中では最少です。

 しかし里崎さん、プロ入りした当初は「ヘタクソ」だったそうです。入団1年目の開幕前、2軍の教育リーグ、横須賀での横浜戦。里崎さんは吉田篤史投手のボールが捕れず、2回も捕逸しました。次のイニングで代打を送られたそうです。

 ヘタクソだった里崎さんを育てたのが2軍バッテリーコーチ(当時)の山中潔さんです。現役時代は広島を皮切りに5球団を渡り歩き、ロッテ、北海道日本ハムで17年間コーチをしました。今季は韓国プロ野球・高陽ワンダーズでバッテリーコーチを務めていました。

 里崎さんによると、山中さんが他のコーチと違っていたのは、あれをやれ、これをやれと一切、強制しなかったことだそうです。

 キャッチャーの守備練習といえば、キャンプ中、重装備で至近距離からコーチのノックを受けるのが定番です。泥まみれになりながら、ワンバウンドのボールに飛びつくシーンは“特訓”そのものです。捕球に失敗して後ろに逸らしでもすれば、コーチから容赦のない罵声が浴びせかけられます。指導者からすれば、“愛のムチ”といったところでしょう。

 ところが山中さん、そうした練習を選手に課すことは一切、ありませんでした。

 その理由を里崎さんが訊ねたところ、こんな答えが返ってきたそうです。
「オレは現役時代、そういう練習を死ぬほどやらされてきた。コーチには“体や腕に当たっても痛そうにするな”と叱られた。でも、そんな練習はひとつも役に立たんかった。ムダな練習をオマエらにやらせるわけにいかん……」

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