「詰め込み」と「ゆとり」の間!? オックスブリッジの短期集中型教育・8週間制度を読み解く
嵐のような1学期を終えて
寺中茉有(てらなかまゆ)
ケンブリッジ大学 学士卒 医学部前半
インペリアルカレッジ 学士課程 医学部4年
1993年和歌山県和歌山市生まれ。3歳からイギリス・ロンドンに移住し、現地高校(North London Collegiate School)を卒業。2011年よりセントジョンズカレッジで医学部を専攻し、医学部前半を卒業後2014年よりロンドンのインペリアルカレッジで医学部後半に進学。吹奏楽部やオーケストラで活動しつつ、2013年は日英会の書記も務めた。食べきれないほどのお菓子作りと音楽が趣味。

子どもの頃の夏休みの思い出と言えば、日本にある両親の実家で過ごしたエンドレスな猛暑日。高校生の従兄弟が遊んでくれなかったのが不満だったことを覚えている。日本に着いても彼らはまだ学期中で、私がイギリスに帰るころにはまた学校が始まっていた。しかも、彼らは休み中も塾に通い、部活に勤しみ、「休みなのにダラダラしないだなんて!」と驚いた。

当時から私の夏休みは長かった。イギリスの学校は夏休みが2ヵ月あるのが当たり前だ。だが、それがさらに膨らんだのが大学生活。オックスブリッジの教育の最大の特徴ともいえるのが、学期の短さであろう。一学期がたったの8週間で、ホームシックになる間もない。ロンドンに帰るたびに、大学外の友達に「もう戻ってきたの?」と呆れられた。3学期しかないので、全部で24週間。しかも3学期は試験が多く授業がほとんどないので、年間でも実質20週間程しか授業がない。これはオックスフォードも同じことだが、1学期10週間以上の他大学に比べ、極端に学期が短いのは何故なのか。2ヵ月弱の短い期間で生徒達に何ができるのか。

Russell Group Universities

教育というのは高くつく。今までの記事で伝えられてきたように、1人1人の生徒にスーパービジョン・チュートリアルを提供し、カレッジの教員を揃え、様々な設備を整えるためにはかなりのお金がかかる。このように濃密な教育環境を整えることができるのは、オックスブリッジがRussell Group (ラッセル・グループ)という種類の大学だからである。ラッセル・グループの大学は、様々の分野において高いレベルの教育と研究を両立させる大学のことである。世界的な地位を築き上げるラッセル・グループ大学はイギリスに24校あり、そのトップを走るのがオックスブリッジと言える。数々のノーベル賞受賞者を叩き出したオックスブリッジは、研究からの資金で教育を支えているらしい。この大切な資源を守るためにも、8週間学期は重要なのだ。

生徒にとっての利点①:爆発的な勉強力

ケンブリッジ医学部2年生の平均的な1日は、午前9時の講義から始まる。1時間ずつの講義・解剖・実験を終え、午後5時頃に帰宅し、夕方のスーパービジョンに参加する。授業の合間にクラブ活動や友人関係を楽しむ。

このように、ケンブリッジの学生の1日は予定がぎっしり詰まっている。8週間しかない学期を最大限に活用するために、集中的で効率のいい勉強方法を覚える。知識に対して貪欲になり、どっぷりと学問に浸かることができるのだ。さらに、整理整頓術と優先順位をつける能力が身に着く。ケンブリッジに入学した当初はノートを書き出すことでしか覚えられなかった私も、自分が目で覚えるタイプなのだと知った。次第に図を使って記憶を植えつけることを覚え、私室の壁は自作のポスターだらけになった。試験がある3学期は、朝から晩まで町中にあるたくさんの図書館にこもった。誕生日もスタディー仲間と図書館のカフェにケーキを持ち込んで祝ったのは今でも楽しい思い出だ。こういう能力は将来にも役立つことだから、とても感謝している。大学で覚えたものを使って、オックスブリッジの学生は卒業しても活躍し続けるだろう。

 
3学期になるとたくさんの学生の隠れ家となるケンブリッジ大学図書館。合計800万冊以上の本が保管されているらしい。