自民党の報道統制と、終わってしまった(?)テレビ局

『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol112(2014年12月12日配信)

〔PHOTO〕gettyimages

安倍氏に代わって出された文書

11月18日の安倍総理による解散表明後、解散前日の20日付けで発出されたある文書。私がそのコピーを見たのは、それから1週間近くも経った11月26日のことだった。

この文書の発出者は、自民党副幹事長の萩生田光一氏と報道局長の福井照氏だ。萩生田氏は、総裁特別補佐も務める安倍総理の側近の一人だ。しかも、安倍氏は、自分自身の直接の関与を否定しつつ、その内容は問題ないとして、要請そのものを肯定してしまった。従って、この文書は、安倍氏に代わって発出されたものだという位置づけがはっきりとしてしまった。

最大の驚きはテレビ局の対応だ

今回の事件で最も驚くべきことは、実は、この文書を受け取ったテレビ局や、それを知った他の報道機関の多くが、本件を重大な問題だと受け止めていないことにある。自民党がやったことは、「暴挙」と言って良いが、日本の報道機関が、1週間近くこれを放置したことは、それ以上に深刻な問題だ。

これを驚愕のスクープとして11月26日に最初に報道したのが、テレビ局でも新聞社でもない、インターネットテレビで毎日ユニークな情報を発信している「ニューズ オプエド」だったのがそれを象徴している。

まず、テレビ局は、この問題を少なくとも局長レベルで知っていたわけだし、局長が社長や会長に隠していたとは到底考えられない。これを報道しなかったのは、会社全体として、報道しないという判断をしていたことになる。報道したら安倍総理に睨まれる。それを恐れた会長・社長は抗議することも報道することもなくおとなしくしていたわけだ。政府を監視するというマスコミの役割を果たす気力も能力も持っていない人たちの集まりだということになる。

しかし、これは、単に報道機関としての姿勢の問題にとどまる問題ではない。何故なら、報道を歪めようとする自民党のスキャンダルをあえて隠した行為は、逆に、選挙で自民党に不利になる重大な事実を国民に知らせず、結果的に自民党の選挙戦に有利に働くという結果につながるからである。

つまり自民党に肩入れする、明らかな偏向報道であるということになる。ということは、この問題をニュースとしてしっかり報道することをしなかったテレビ局こそ、放送法違反で放送免許を剥奪すべきだということになるはずだ。

ここでも記者クラブの弊害が出た 新聞社も同罪

そして、隠れた問題がもう一つある。この文書は、官邸詰めの記者クラブ(内閣記者会)にいる各テレビ局のキャップ(各社のクラブのトップ)に渡されたというから、同じ記者クラブにいたテレビ局以外の新聞社の記者たちも知っていたと推測されることだ。記者クラブだけでなく、その情報は各新聞社の政治部にも届いていただろう。しかし、どの新聞も通信社もすぐにはこれを報道しなかった。私は、オプエドのスクープ後に何社かの全国紙の政治部の記者に電話して、何故これを書かないのかと聞いてみた。彼らは、異口同音に、おかしな話だ、書くべきだ、でも、官邸のクラブは動かないかもしれませんね、という反応だった。選挙中だし、安倍さんのことを官邸のクラブは怖がってるからねえ、一応デスクには言ってみるけどという感じだ。

記者クラブでは、こういう時に、阿吽の呼吸でカルテルが成立する。どの社も記事化に動いていないなというのを確認しつつ、君子危うきに近寄らずということで、みんな沈黙していたのだ。最初にテレビ局にこういう紙が流れたようだということは、おそらく20日の配付直後に各紙とも気づいていたはずだ。しかし、選挙が近い時期にこうした情報を流して自民党に逆切れされることを心配したのかもしれない。あえて、取材をしたり、確認を取ったりということはしなかったのだろう。

オプエドのスクープが出ても、オプエドは視聴者がまだ少なく、社会的な影響力が弱いから、無視すればそのうちこの情報も消えてしまうと思っただろう。各社ともすぐに後追いの報道はしなかった。

この紙自体は、26日16時のオプエドで公開され、コピーは誰にでも無料で配りますと番組で言っていたし、そもそも、官邸の記者クラブで系列局の記者に言えば、すぐに入手できたはずだ。

自民党に真偽を確認するのは、電話一本で済む。現に、ジャーナリストの今井一氏などは、すぐに事実だと確認して、同日夜にはツイッターで速報している。

翌日、これを記事にしたのは、夕刊紙の日刊ゲンダイだった。ゲンダイは、テレビ局数社に確認を取って、文書が本物だということを含めて報道した。ネット上では既に、本物だと確認した今井一氏のツイートで文書のコピーが広く流されていた。

ここまで来ると、さすがに新聞社は書かざるを得ない。毎日がかなり詳しく、かつ批判的に書くと、各紙、安心したのかすぐに後追いで記事を書いた。もちろん、読売などは、非常に控えめで、批判的コメントなしの記事だったが。

(略)

特定秘密保護法など不要?

こういう政党が政権にいることは、特定秘密保護法が12月10日に施行されたことによって、ますます知る権利や報道の自由への弾圧が行なわれるのではないかという懸念を強めることになる。同法の施行などなくても、自民党はしっかり、報道弾圧を行なっているのだから、これに特定秘密保護法が加わったら、暴力団にバズーカ砲を与えるようなものではないか。

日本の報道の自由は世界で59位 日本のイメージを貶める安倍総理

安倍政権に対するこうした認識は、日本国内だけに限ったものではない。

「国境なき記者団」が発表している「報道の自由」世界ランキングというものがある。それによれば、日本は、G7の中ではダントツのビリ、先進国中でも異例の下位にあり、2014年は何と59位である。

民主党政権時代は、10位代か悪くて20位代だから、顕著な悪化である。ちなみに、第一次安倍内閣の時も、51位を記録しているから、安倍氏は構造的に報道に対して弾圧的だと世界にも認識されていることがわかる。

この例を挙げるまでもなく、日本のイメージを極めて悪くしているのが安倍総理だと言って良いだろう。武器輸出や原発輸出も同様に日本のイメージを著しく傷つけている。これが日本のリーダーだと思うと恥ずかしいだけでなく、悲しくなってくる。(以下略)

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol112
(2014年12月12日配信)より

 

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