官僚主導の安倍政権
『週刊現代』官々愕々より
〔PHOTO〕gettyimages

12月14日に投開票の行われた衆議院解散総選挙。今回ほど「解散の大義」と「争点は何か」が議論された選挙も珍しい。

完全に虚を衝かれた野党からは、解散に対する恨み節が「大義論」として噴出した。「解散は望むところ」であるはずの野党が、「大義がない」としつこく言い募ったのは、よほど選挙に自信がなかったからだろう。

一方の安倍政権側も、「アベノミクスはうまく行っていない。このままではジリ貧だ。野党が準備不足のうちに奇襲攻撃をしかけよう」という本音を隠す必要があった。そこで展開された安倍政権の「大義」論の変遷が面白い。

まずは、「消費税増税延期は3党合意を覆すものだから国民の信を問うのは当然」と主張した。しかし、「3党合意に基づく消費税増税法案の景気条項には、景気回復未達成の時には増税を延期すると書いてある」と反論されて完敗。

二番目の大義は、「税制は民主主義の根幹だ。増税を延期するのだから、国民の信を問うのは当然」というもの。安倍氏のブレインは「代表なくして課税なし。そんなイロハもわからないのか」と、税制を変えるなら選挙で国民の代表を選びなおす必要があると語った。しかし、この言葉は、選挙で議会に代表を送る権利がなければ課税は不当だという米国の独立戦争時の標語で、使い方がおかしい。逆に「そんなことも知らなかったのか」と切り返された。

しかも、「集団的自衛権行使容認の閣議決定のときには実質憲法改正なのに国民に信を問わなかった。憲法は民主主義の根幹ではないのか」という致命的な批判を受けて、この議論もすぐに消えた。

その後、安倍政権の大義論は、選挙の争点論にシフトした。そこで主張されたのは、「アベノミクスを進めるのか止めるのかを問う」との議論。しかし、「アベノミクスの第三の矢を止めているのは安倍氏自身だ」という批判を誘発した。

最後に安倍氏側近が展開したのが、「今回の選挙は財務官僚と自民党内守旧派族議員の連合対改革派安倍総理の闘いだ」という主張だ。これは、TPP参加決定や医薬品ネット販売解禁のときと似ている。「悪者」の抵抗を演出し、「最後に安倍総理のリーダーシップで『改革』が決まった」と大本営発表するが、しばらくたつと、静かに、全く看板倒れの結果が出て終わる。姑息なやり方だ。

安倍氏は官僚と闘っているのか? 答えはNOだ。

安倍氏は、就任早々公務員改革を封印。日本郵政の坂篤郎前社長(元財務省)の天下りを糾弾するパフォーマンスはやったが、普通の役人の天下りは完全野放し。4月には、東北復興予算の財源として7・8%削減していた公務員給与を元に戻し、10月には、月給0・27%、年間ボーナス0・15ヵ月分の引き上げを決めた。

増税で対立しかねない財務省には好きなだけ国債を発行させて、公共事業の配分という彼らが一番喜ぶ利権を増やし、分厚い自民党の公約集には、各省の予算要求項目がずらりと並ぶ。アベノミクス第三の矢の規制改革も本気度はゼロ。官僚への配慮がみえみえだ。

これだけお粗末な大義論、争点論ではあったが、後から見れば、自民党にとっては、全く問題なかった。障害物競走で、必死に障害をクリアして何とかゴールにたどり着いて振り返ってみたら、野党は池に落ちたり、怪我をしたりで、はるか後方にいたという状況だ。

税も予算も、全て官僚によるお膳立ては済んでいる。それに乗れば、補正予算や来年度予算の成立もそんなに遅れることはない。

組閣と同時に官僚主導の安倍政権が再スタートする。

『週刊現代』2014年12月27日号より

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