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〔PHOTO〕gettyimages

石油価格の下落が急ピッチで進んでいる。

米EIA(エネルギー情報局)も来年の石油価格予想を下方修正。「逆オイルショック」とも騒がれる一方で、来年には再びの石油高に転じるとの声も聞こえる。石油価格はこれからどうなっていくのだろうか。

石油価格の下落が鮮明になったのは10月初旬のことである。その引き金を引いたのは、サウジアラビアの石油輸出価格の引き下げだった。サウジアラビアを含むOPEC(石油輸出国機構)加盟国が価格支持のために減産にすると予測されていたが、減産合意に至らなかった。

かつてであれば、OPECは減産に踏み切り、自らの存在感と影響力を誇示できた。

しかし、今やその力がないほどに、自然エネルギーなど種々のエネルギーがでてきている。OPECが減産合意できなかった背景にあるのは、石油のウエイトが減ってきたというエネルギー事情の変化である。

実際、日本の場合、'13年度のエネルギー白書から、'12年度のエネルギー供給をみると、石油44・3%、石炭23・4%、天然ガス24・5%、原子力0・7%、水力3・2%、太陽光・風力・バイオマス・地熱等4・0%となっている。かつて石油は70%以上であったので、石油依存度がかなり低くなったことが見て取れる。

OPECの影響力が低下しているのは、シェールガス掘削ブームで米国の石油生産量が急増しているという側面もある。

10年ほど前には、米国は石油の国内消費分の6割を輸入に頼っていたが、今では全体の3分の1程度までに下がっている。

米国のシェールガス革命は、OPECにとって当面は目の上のたんこぶである。こう考えていくと、「石油のエネルギーのうちに占めるシェアの低下」「OPECの石油のうちに占めるシェアの低下」という市場の動かしがたい事実のほかに、「OPECのシェールガスつぶしの思惑」も浮かんでくる。

というのも、いまここで石油価格が下がれば、それと連動するシェールガス掘削ブームも勢いが弱まる。シェールガス掘削ブームはある程度、石油価格が高いことを前提としている。当面、石油価格が上がらないというのは、シェールガス掘削ビジネスにはマイナスに作用するのである。

いずれにしても、供給サイドからみると、当面、石油価格が上昇する気配はない。

需要サイドからみても、米国の景気回復が今一歩であることに加え、欧州の景気低迷が大きいことから、石油価格は目先に上昇することはない。さらに、中国でも成長率見通しの下方修正がある。

こうした状況は、エネルギーを海外に依存している日本経済にとってラッキーなことである。

かつて'73年と'79年に石油価格が上昇して日本経済が低迷したが、そのときと逆になることが予想されるからだ。いわば「逆オイルショック」ということだが、実はその恩恵は考えられているほどには大きくないという点にも注意が必要だろう。

なぜなら、日本の石油依存が低下したから。欧州では、天然ガス価格が石油価格と連動して低下するので、その恩恵が受けられる。しかし、日本の場合は、東日本大震災で足元を見透かされて高額な長期固定契約を結ばされているケースが多いので、天然ガス価格低下の恩恵も限定的となる。

石油価格の低下は朗報なれど、うれしさは中くらいなり―。

『週刊現代』2014年12月27日号より


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