賢者の知恵
2014年12月19日(金) 加藤たけし

クラウドファンディングに必要なマーケティング志向とは? 100万円以上集めたNPOの先進事例に学ぶ3つのポイント

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NPOマーケティングの先進事例を学び、感じる「NPOマーケティングフォーラム2014」が11月29日(土)、東京・赤坂の日本財団ビルで開催された。

ソーシャルメディアのビジネス活用コンサルティングを手がける株式会社ループス・コミュニケーションズに所属しながら、プライベートでは社会的な課題の解決に取り組む革新的な事業に対して資金提供と経営支援をおこなう「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)」のパートナーとして活動している私は今回、この「NPOマーケティングフォーラム2014」のケーススタディ分科会において、以下2セッションのモデレーターを務めた。

●カタリバのFacebook、Google広告を活用したオンライン広告とマーケティング
●100万円以上達成! クラウドファンディングに必要なマーケティング志向

この記事では、エイズ孤児支援NGO・PLAS 代表理事の門田瑠衣子氏、そしてADRA Japan ファンドレイジング担当の山本匡浩氏が登壇した「100万円以上達成! クラウドファンディングに必要なマーケティング志向」のセッション内容をダイジェストでお届けしたい。

ADRA Japan ファンドレイジング担当の山本匡浩氏

周到な事前準備と着実なPDCAで約150万円を調達したADRA Japan

ADRA Japanの山本氏とエイズ孤児支援NGO・PLASの門田氏は、それぞれクラウドファンディングを通じて100万円以上の資金調達に成功した事例を紹介。プレゼンテーションでは、実施したプロジェクトの狙いやプロセスについて語った。

最初にプレゼンしたのは、ADRA Japanの山本氏。「ADRA(アドラ)」は「Adventist(キリスト教)」「Development(開発)」「Relief(緊急支援)」「Agency(機関)」の頭文字をとった団体名であり、国際協力NGOだ。世界各国でさまざまな支援をおこなうとともに、日本国内でも東日本大震災などの災害・復興支援に取り組む。

そんなADRA Japanが挑戦したクラウドファンディングは、ネパールで「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ:口唇の一部に裂け目が現れる先天性の疾患)」による差別と障害に苦しむ子どもたちの笑顔を取り戻すために医療チームを派遣するというプロジェクトである。目標金額を上回り、約150万円の資金調達に成功した。

ネパールの子どもたちを笑顔に! 差別と障害で苦しむ患者さんのために医療チームを派遣!
 https://readyfor.jp/projects/CLPP2013

山本氏が発表したポイントは大きく2点。1点目は「事前準備」について。今回のクラウドファンディングの目的を「Webを通じた新規支援者の獲得」に絞ったこと、他団体のクラウドファンディング成功事例を徹底的に調査したこと、ピッチのブラッシュアップやテンプレートの作成をはじめ、プロジェクト開始前にできることはできるだけ事前に準備したこと・・・などが挙げられる。特に成功事例に関しては、国内の有名事例はもちろん、海外の医療系プロジェクトも数多く調査し、支援者属性を分析することによって「なぜ成功したのか」をとことん考え抜いた様子が伺えた。

2点目は「着実にPDCAを回した」ことである。プロジェクトのストーリーをどのように伝え、どのようなリターン(引換券)によってどのくらいの支援を獲得するかといったプランニングの際も、研究した他団体の成功事例を踏まえ、具体的な数字をExcelでシミュレーションした。自団体のブログ、動画、書籍などの既存の広報物をクラウドファンディング用にリライトし、定期的に「新着情報」をアップデートした。

取り組んだ施策が支援者の獲得につながったかどうかをできるだけトレースして分析した結果、その「新着情報のアップデート」は期待するほどの効果が出ていなかったことに気づいた。「新着情報のアップデート」頻度を週2~3回から週1回に減らし、メルマガの配信に取り組んだ。想定していたペースで支援者を獲得することはできなかったときも、その遅れを取り戻すための施策を考え、着実に実行していたことが印象的だった。

エイズ孤児支援NGO・PLAS 代表理事の門田瑠衣子氏

個別メールの効果は10倍! 分析結果をもとにダイナミックに施策を変えていったNGO・PLAS

次にプレゼンしてくれたのは、エイズ孤児支援NGO・PLASの門田氏である。PLASはケニアとウガンダにおいてエイズの啓発活動やエイズ孤児の教育支援をおこなう団体。代表の門田氏が大学院生時代の2005年から活動を開始し、この9年で26000名以上にエイズ啓発を提供してきている。

PLASが挑戦したクラウドファンディングは、現地住民の就業能力や自立心を後押しする形でシングルマザーに仕事をつくり、その子どもたちの就学・生活支援を進めるためのプロジェクト。目標金額の200万円を大きく上回り、最終的に226万円の資金調達に成功した。

■小学校を貧困で卒業できないウガンダのエイズ孤児500人に教育を!
 https://moon-shot.org/projects/25

門田氏がこのクラウドファンディングで取り組んだ施策は「メール訴求」「イベント開催」「個別訪問」の3つに分けられるという。「メール訴求」においては、これまでの支援者をセグメンテーションし、それぞれに内容を最適化したメールを4回送付。「イベント開催」では、参加者と丁寧にコミュニケーションを継続することにより、寄付の獲得を目指した。「個別訪問」では、過去の高額寄付者及び連携企業に対して個別にアプローチした。

門田氏の発表で特に印象的だったのは、期間中にPLASの施策がダイナミックに変更されたことである。思うように進まなかった連携企業からの寄付獲得に関しては早々にストップし、高額寄付者への個別アプローチに注力した。5回の開催を予定していたイベントは、ほかの施策と比べると寄付獲得の効率が悪かったため、最後の1回は中止した。「仮説が外れて苦戦した」ように思われるかもしれないが、このようなダイナミックな判断を短期間のうちにできること自体が、PLASの強みと言えるだろう。

PLASでは「メルマガ購読」「イベント参加」「マンスリーサポーター」「高額寄付者」など、貢献度によって支援者を10段階のフェーズに分けている。だからこそ、仮説を立てる際もイメージが明確になるし、実際に施策を実行する際、たとえば「メール訴求」でも、セグメンテーションしてメールを送付して効果を検証することができる。支援者を10段階に分け、Salesforceを活用して効果的にアプローチしている非営利団体は、そう多くはないのではないだろうか。

また、具体的な数値が何度も出てきたことも印象的だった。「メール訴求」では「子どもの状況」を訴求したほうが「母親の思い」よりも3倍寄付された。目標達成に対して弱気なメールと強気なメールでは、弱気なメールの方が2.5倍の反響があった。一斉メッセージよりも個別メールのほうが10倍効果があった・・・など、仮説を立てて実行し、その結果を分析することによって、より効果的な施策に注力できるサイクルをつくっている実例は、貴重なマーケティングノウハウだ。

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