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二宮清純 レポート 12勝でチーム最多勝に輝いた久保康友 横浜DeNA投手・34歳 どこで投げても、野球は野球

2014年12月21日(日) 週刊現代
週刊現代

移籍先のチームで成功できるか否か。それはプロ野球選手にとって、大きな悩みの種だ。だが、この男は違う。「移籍そのものが人生経験になる」と言い切るのだ。「球界の変わり者」が哲学を語る。

12球団全てに所属したい

最終順位こそ5位だったものの、9月末までクライマックスシリーズ出場の可能性を残すなど、今季の横浜DeNAの戦いぶりは、これまでとは一味違った。

チームを牽引したのが、今季、FA権を行使して阪神からやってきた久保康友である。ローテーションの柱としてチームトップの12勝(6敗)をあげた。

—FA移籍の決断は成功でしたね?

そう水を向けると、軽くいなされた。

「何をもって決断が成功というのか、僕にはわからないですね」

プロ野球の世界は「数字が全て」と言われる。12勝という成績が不満なのか。

「仮に数字が悪かったからといって、決断が間違っていたとはならない。何か得られるものがあるからこそ、僕は決断したんです。

少なくとも僕は数字を全てにおいて優先するタイプではない。決断したことで得られるであろう人生経験の方が尊いんです。この考えは、これからも、きっと変わらないと思います」

のっけから禅問答のようなやりとりになってしまった。球界きっての〝複雑系〟といわれるだけに、なかなか一筋縄ではいかない。

DeNAへの移籍を決めた理由はカネや出番のためではない。知らない環境に身を置き、そこでレベルアップすることに無上のやりがいを感じたからである。

「できれば12球団全てに所属してみたい」

34歳は、真顔でそう言う。

「1球団60~70人として、僕はまだ200人くらいの選手としか接していない。もっと多くの選手と接することで、これまで知らなかった成功例と出会うことができる。それによって〝あぁ、この選手は、こういう環境で育てれば成功するんだな〟ということがわかるようになる。その過程を見る作業が僕にはおもしろく、充実している時間でもあるんです」

複数の球団を渡り歩き、多くの選手と接すれば、確実に経験という名の引き出しの数は増える。それを自らにフィードバックさせ、さらなる進化への糧にしたいと久保は考えている。

この貪欲なまでの向上心は、どのようにして生まれたのか。

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