自国の通貨が弱くなるのを喜ぶという心理はおかしい。「株価と経済は一致している」という政権が流すプロパガンダから自由になろう

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伊藤: 共同通信によりますと、(12月)4日のニューヨーク外国為替市場で円が急落し、一時1ドル120円台をつけました。円相場で120円台をつけたのは、およそ7年4ヵ月振りです。

(12月5日の)午前9時半現在は、前の日に比べて3銭円安ドル高の1ドル119円77~87銭の水準になっています。アメリカの景気への先行き期待感や東京などアジアの主な市場の株価が上昇したことを背景に、投資家がリスクをとる姿勢を強め、比較的安全な通貨とされる円を売ってドルを買う動きが広がりました。

邦丸: まあ、リスクをとるようになったということは、おカネが動くという意味ではいいとしても、それにしてもこの急激な円の下落。一部のエコノミストの間では、1ドル130円、ひょっとして150円なんていうことも絶対にないとは言えない、それ以上というふうに見ている人もいるんですが、佐藤さん、この円の急落をどのようにご覧になりますか。

佐藤: ひと言で言うと、よくないです。要するに、為替というのはある程度のところで安定していることが重要なんですよ。110円であれば107円ぐらい、あるいは113円ぐらいであればいいのですが、これだけ乱高下して、ついこの前まで80円台だったのに120円台になるということになると、円がマネーゲームの食い物にされているということなんですよ。

もうひとつは、安倍政権は株価を上げるということに関心を持っている。円が安いほうが株価が上がりますからね。ただ、ドルベースで計算してほしいんです。ぜんぜん株価は上がっていないですから。

邦丸: ドルベースでいけば。

佐藤: はい。そういうことを考えた場合、どうも数字のマジックとして円安が使われている気がします。

しかし、輸入品がどんどん上がるわけです。たまたま今、石油の世界で石油が非常にダブついている。これは、イスラーム国が密輸をしているので、もし、石油の値段を上げてしまうとイスラーム国に入るカネが増えちゃうからサウジアラビアが減産に応じていないんですよね。普通なら減産しているんですけれど。そういう特殊事情があって、一時的に石油が安いんです。ですからまた、石油は上がります。

となると、あっという間にガソリンは1リットル二百何十円になる。パンが今まで98円だったものが120円とかいうことになりますね。ですから、目に見えるところで国民生活が変わってくる。そして、実質賃金はぜんぜん増えない。こういう感じになってくるので、いったい、何だ、こりゃ!ということになってくると思います。

邦丸: うーむ。14日が衆議院選の投開票日なんですけれど、アベノミクスで財政出動したりしていますけれど、円相場に口を出すということは世界的に見ても憚られるわけですけれど、手をこまねいているのかなという気もするんですけれど、その辺はどうですか。

佐藤: むしろ、株をがんがん買ってくださいよ、国債はいくらでも引き受けますよと、円を下げる方向で、憚られるような介入をしているわけですよ。

邦丸: 間接的には。

佐藤: ええ。

邦丸: こういう状況になることは見えていたわけですよね。

佐藤: こういう状況をつくりたいんですよ。短期的に株価が上がるから。その後のツケについては考えていないですから、どーゆー人たちなんだと思いますね。

邦丸: 株価連動アベノミクスと言われている。

佐藤: 気をつけなくてはいけないのは、自国の通貨が弱くなって喜ぶという心理です。これはまるで、第2次世界大戦が始まるときの為替ダンピングですよ。自国の通貨が強くなって喜ぶというのが普通の反応です。

邦丸: いずれにしても、マネーゲームのなかでどうなってくるかというと、最近の株価もそうだし、円相場もそうだけど、「乱高下」という言葉自体がこんなに毎日使われるのはねえ。

佐藤: それよりもっと端的に言って、リスナーのみなさんの中で、どれぐらいの人が株を持っていますか。どれぐらいの人がドルを持っていますか。たとえば、1ヵ月ちょっと前に1億円をドルにした人は、1100万円ぐらい儲かっているわけですよね。その1億円がない人には関係ない話なんですよ。

このゲームをやれる超富裕層にとっては「乱高下」は意味があるんですけれど、圧倒的大多数の国民は、ゲームに入ることさえできないんですよね。競馬だって、賭けなければただの獣の駆けっこになるわけでしょ。

邦丸: はははは。

佐藤: ゲームに入らなければ、「乱高下」もおもしろくない。

邦丸: こういう考え方があるらしいんですが、たとえば今、輸入品がどんどん上がっている中で、小麦とかほとんど輸入に頼っているものを国内産品にするような構造転換のチャンスにしてもいいんじゃないかと。

佐藤: 構造転換するに当たっての農業の受け皿が、もはや日本にはないんですよ。国際経済というのはこれだけ緊密につながっていますから、この構造というものを一国で立て直していくというのは、戦争でも起きない限りムリです。

ですから、われわれが「株価と経済は一致しているんだ」という政権が流してくるドグマ、プロパガンダから自由になって、もう少し堅実な方法で、自分の生活実態から経済を見ていくことだと思うんです。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol050(2014年12月10日配信)より

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