イケダハヤト×谷口マサト【前編】「これからのコンテンツの可能性は『長さ』と『深さ』にある。そしてスマホユーザーの感情を震わせたい」
[左] LINE株式会社 広告事業部 チーフプロデューサー・谷口マサト氏、[右] プロブロガー・イケダハヤト氏
スマートフォンやソーシャルメディアの時代において、メディアやコンテンツ、広告をめぐるトレンドは急速に変わりつつある。いま、ウェブコンテンツづくりの本質はどこにあるのか。スマホ時代のメディアの情報発信のあり方とは---。
今回、対談をおこなったのは、今年8月に広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門を上梓した、LINE株式会社 広告事業部 チーフプロデューサー・谷口マサト氏と、6月に高知に移住し、ブログまだ東京で消耗してるの?」を運営するプロブロガー・イケダハヤト氏。この2人がいまコンテンツや広告について考えていること、さらには会社と個人での身のこなし方、都会と地方での働き方を語った(12月6日収録)。

谷口: 新世代努力論』を読みました。競争や報酬を求めるよりも、何かに没頭する方が結果が出るというのは全面同意というくらいおもしろかったです。今回はいつまで東京におられるんですか?

イケダ: 今朝、東京に来て、今夜、高知に帰ります(笑)。一瞬たりとも東京の空気を吸いたくないというか、帰りたくてしょうがないんです。朝5時半に高知空港に行き、午前中に東京に降り立ち、2件の打ち合わせを終えてここに来ました。もうすでにエネルギーが切れています(笑)。

谷口: やっぱり、東京に来ると消耗するんですか?

イケダ: 消耗しますね。東京に来る直前は、なぜかいつも体調を崩しているくらいです。体が高知に最適化されてきています。

谷口: 高知にいると健康になりますか?

イケダ: 体調的にはもちろんですが、精神的にも健康になりますね。人が多くないので、なにかを警戒することがないです。東京にいた頃は、電車のホームで最前列に立つと、押されるんじゃないかと怖かったんですが、そんな余計な警戒をしなくてよくなりました。谷口さんはどちらの出身なんですか?

谷口: 私は滋賀出身です。当時、ヤンキーが多くて、身を守るために空手をはじめたようなものでした。滋賀県の高校を出てから、横浜国立大学の建築学科に進みました。大学卒業後は、企業に就職してほしいという両親の思いを無視して、空手修行のために渡米。テキサスで1年間、ヌンチャクの練習をしていて将来が不安でしたね(笑)。

イケダ: なんだかフリーターみたいな感じですね。

谷口: アメリカ帰りで、ヌンチャクしかできなかったという・・・(笑)

イケダ: 相当アウトローだったんですね(笑)

谷口: 当時、警備員しか仕事がなかったですね。

イケダ: ヌンチャクは使わないんですね(笑)。警備員のあとはどうされたんですか?

外部のクリエイターと連携してチームを作る

谷口: 経歴を簡単に説明しますと、アメリカにいた時代に「クローズドキャプション」という字幕放送があって、耳が聴こえない人のために字幕を表示できる機械があったんです。「これは英語教材にいいぞ」と思い、機械を買い込んで帰国しました。警備員時代には、空いた時間でウェブサイトをつくり、買ってきた機械がネットで簡単に売れたことなどもあり、ネットのおもしろさを実感したんです。

しかし、個人でウェブサイトをつくっていると怪しい人も寄ってくるため、神戸にあるウェブ制作会社に入社しました。その後、外資系のITコンサルティング会社で、IA(Information Architecture: 情報設計)を学びました。コンサルの仕事がメインだったので精神的につらくなって、自らを癒すために「バカ日本地図」などの個人活動をはじめたという流れです。

イケダ: 仕事のフラストレーションがあのような創作につながっていたんですね。

谷口: ただ、バカ日本地図であってもやっていることは仕事と一緒でした。つまり、仕事で書いていたユーザーのメンタルモデル、商品がどのようにユーザーの脳内で記憶されているかを遊びに応用しただけです。その後、2年ほどフリーランスで活動してから、ライブドアに入社しました。

現在はLINE公式アカウントを担当する一方で、ライブドアニュースのタイアップ記事を制作しています。後者については、デイリーポータルZの林さん(ニフティ株式会社の林雄司氏)と出会ったことがきっかけではじめたんですが、年々問い合わせは増えていますね。

イケダ: LINEとタイアップ記事、どちらがメインなんですか?

谷口: いまはタイアップ記事のほうが多いですが、来年はLINEのほうに注力していきます。

イケダ: え、もったいない・・・。

谷口: なぜかというと、LINEの中でもコンテンツをつくりはじめているんです。こちらのほうがより多くの人にリーチできることもあり、さまざまなことを試してみたいという気持ちがあります。

イケダ: でも、谷口さんが手がけるライブドアニュースのタイアップ記事は属人性が高い仕事なので、それが減っていくとつまらなくなると思います。

谷口: タイアップ記事については、編集や監修という立場でかかわったり、ほかのディレクターやプロデューサーを育てていこうかなと思っています。やめるわけではないです。

イケダ: 個人的に「おもしろいコンテンツをつくる体制をどのようにつくるのか」ということに関心があります。「育てる」と言っても非常にむずかしいことですよね?

谷口: おっしゃる通りです。コンテンツは当たるかどうかわからない水物。いわば水商売なので、サラリーマンにとってはハードルが高い。そこで、テレビ番組の制作会社のように、外部のクリエイターと連携してチームを作っていつも制作しています。なぜチームをつくるかというと、イケダさんのように個人でバリバリ書ける人はすでにいるので、チーム化しないと差別化ができないためです。

イケダ: 属人性の高い仕事であれば、個人でやるという選択肢もあると思いますが、そもそも谷口さんはなぜ会社に属しているんでしょうか?

谷口: 私がライブドアに入ったのは、面接相手の堀江さん(元ライブドア社長の堀江貴文氏)がもともとバカ日本地図をご存知だったことがきっかけでもあるんです。それ以来、本業のパラレルのような感じで個人活動を比較的自由にやらせてもらっています。

このスタンスのいいところは、仕事だと失敗するかもしれないことをまずは個人で試してみて、うまくいったことを仕事に生かすことができることです。また、仕事で出会った人と個人で付き合いをもつこともあれば、その逆もあります。仕事と個人、並列で付き合うほうがコストパフォーマンスは高いと思いました。イケダさんはパラレルキャリアについてどうお考えですか?

イケダ: 辞めたほうが自分のやりたいことができるんじゃないかなと思います。いまのメディアを取り巻く状況を考えると、資金調達もできて動画も盛り上がっています。プロダクションをつくって、LINEやリクルートに買収してもらうのがいいと思います(笑)。

谷口: 小川さん(対談に同席した学生編集者の小川未来氏)はリクルートに就職ですが、個人活動も大丈夫なんですよね?

小川: 書類1枚でOKですね。最近、メディアの話になると「イケダハヤトモデル」というものをいろんな人と話しています。「個人(フリーランス)」「月間100万PV」「個人メディア」「年収1,000万円」というものです。これはひとつのモデルですが、あまりその先が見えない気がしています。それなら、ウェブの予算も増えている会社に入ったほうが、つくりたいコンテンツを多くの人に届けることができると考えています。このモデルの先はどう考えているんでしょうか?

イケダ: 次のモデルについては、メディアのインキュベーターのようなポジションを考えていて、投資先のメディアを探しています。いまのところ、いいメディアがあれば共同編集長などに就いて、知見を提供して成長させ、売却やIPOを目指すという路線しか見えていないですね。

さきほど谷口さんに起業を勧めましたが、自分のネットワークを使ってクライアントを引っ張ることができると思います。独立のモチベーションはあるんでしょうか?

谷口: いまのところないです。たぶん、ドMなんでしょうね。組織にいると今の自分にとって嫌なことも多くやらせてもらえるので、結果としてやれることが増えていく(笑)。好きなことをやっていてうらやましいと言われることもあるんですが、実際は調整ばかりですごく大変です。取材や撮影、広告とコンテンツの境目をどうするかなど、9割くらいは調整なので、基本的には地味な仕事をしています。

イケダ: クライアントとのやりとりは大変そうです。成果の確約もできないですよね?

谷口: 誘導があるので最低保証はありますが、バズることを確約できません。少し話を変えると、タイアップ記事に最低保証があるのはメディアというプラットフォームがあるからですが、会社もある意味、個人のプラットフォームと言えないかと。プラットフォーム型の組織であれば、個人活動もできるので辞めなくてもいいかなと思います。たとえばIT業界は、ほかの業界に比べると個人のネット活動には比較的寛容ですよね。場合によりますが。

イケダ: 会社というプラットフォームの上で活動する個人というか、フリーランスみたいな感じですね。

谷口: よく冗談で「外注」って言われることもありますね(笑)。正社員として10年以上勤務しているので古株なんですが・・・。

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