特集 17年度にも本格的に導入目指す 国交省
老朽化進む橋・トンネル・ダムの点検、応急復旧[インフラ・ロボ]

橋やトンネル、ダムなどの点検や災害の応急復旧などを、人に代わって作業するインフラ用ロボットの技術開発が進んでいる。インフラの老朽化が深刻になり、地震や風水害のリスクが大きくなっている一方で、メンテナンス担当の自治体職員や技術者の不足が問題になっている。次世代社会のインフラを守るために効率・経済性と安全面で優れるロボットへの期待は大きい。国土交通省は企業や研究機関が開発したロボットが、現場で活用できるかなどの検証をしたうえで、2017年度に本格的に導入し、運用を始める方針だ。

11月17、18の両日、東京都八王子市の新浅川橋下の浅川河川敷で、橋の維持管理部門のインフラ用ロボットの現場検証が行われた。同省の募集に研究機関などが応募した中から選定された点検用ロボットについて、人に代わってどの程度の作業ができるか、課題は何か、などを調べるのが目的という。

広島市のルーチェサ―チが開発した6枚ローターの橋点検用飛行ロボット=東京都八王子市の新浅川橋下の河川敷で11月17日

同省が示した橋の点検要領は、橋桁の腐食、亀裂、破断、防食機能の劣化や、車や人などが通る部分を支えるコンクリートの床版のひび割れ、鉄筋の露出、漏水があるかを目で確認する目視検査と、橋桁のボルト・リベットの緩みや床版の浮きなどをたたいて調べる打音検査を行うこととなっている。これらの要領に従ってロボットが安全で効率的な作業が可能か、さらにコスト面ではどうか、などについて大学教授や建設コンサルタント、研究員らの専門家で構成する現場検証委員会のメンバー14人が9社・機関が開発した9件のロボットをチェックした。

17日の検証で目を引いたのが、四つのローターを持つマルチコプターの周りを直径90センチの球形に組んだカーボン製の骨格で覆った飛行型ロボット。東北大が宇宙技術振興財団などと開発したもので、ラジコン操作で橋桁下の狭い部分に入っての飛行中に、コントロールミスで鉄骨などに衝突してもカーボンの骨格が本体を保護する仕組みで、本体にはLEDフラッシュ付きのカメラを搭載し、目視点検を行うという。

国土技術政策総合研究所内の橋で検証を受けたミライト社開発の伸縮ビームロボット=国土交通省提供

広島市のベンチャー企業、ルーチェサーチ社が広島工業大などと開発した飛行ロボットは6枚のローターを備える。レンズの向きを自在にコントロールできるデジタルカメラを搭載し、橋桁や橋脚に接近して撮影し、コンピューター処理で2Dや3D映像に変換して損傷箇所を把握する。同社の飛行ロボットは74人が犠牲となった8月の同市安佐南区の土砂災害の際に、100~200メートル上空から現場を撮影し、被災状況を把握するのに大きな役割を果たした。撮影された動画はテレビでも放映されたという実績がある。

また、富士フィルムが首都高速道路技術センターなどと開発したロボットは、橋桁下部のH鋼の横に突き出た(フランジ)部分に、3個のタイヤを両端に取り付けたポールが自力走行、ポールから下げた複眼式のカメラで橋の各部を撮影する。カメラから送られた映像をモニターに映し出す。複眼式なのでひび割れの奥行きなども的確に把握できるという。このほか、赤外線カメラを使ってコンクリート内部のはく離やひび割れを把握し、打音検査に代わる装置を備えたロボットなども検証を受けた。

橋の点検ロボット検証は、新浅川橋のほか茨城県つくば市の国土技術政策総合研究所内の橋や、静岡県の浜松市と湖西市を結ぶコンクリート橋の浜名大橋でも行い、2カ所合わせて25件のロボットがチェックされた。

国土技術政策総合研究所内の橋で検証を受けた伸縮ビームロボットは通信インフラ建設会社のミライト社が開発した。橋の両サイド、欄干の外からはしご状のビームを降ろし、橋の下で梁を伸ばして連結、カメラを搭載した点検装置が梁を伝って動き、近くから目視点検ができる仕組みになっている。幅20メートルまでなら点検可能という。

また、足利大学は約300メートルの小型飛行船と小型車両ロボットを開発。飛行船はスマホで操作できるWiFiカメラを搭載、近くから撮影して目視検査を行う。橋の構造物にぶつかっても、落ちても衝撃は少なく安全性は高いという。

自治体担当者の深刻な人手不足

同省がインフラ用ロボットの導入を積極的に進めるのは、1950年代後半からの高度経済成長期に続々と建設された社会インフラが老朽化してきたのと自治体のインフラ維持担当の職員・作業員不足、それに最近の自然災害の多発と発生リスクの高まりが大きな要因になっている。

現在、国内には2メートル以上の道路橋が約70万橋、トンネル約1万本、水門、堰など河川管理施設が約1万、水深4・5メートルより深い港湾岸壁約5000施設ある。昨年の同省の調べでは、建設年度が明らかになっている道路橋40万橋のうちの18%が建設後50年以上経過しているものだった。トンネルは全体の20%、河川管理施設は25%、港湾岸壁は8%が50年以上前に造られた。

建設後50年以上経過する施設は、23年には道路橋が43%、トンネルが34%、河川管理施設が43%、港湾岸壁が32%と増え、33年には道路橋の67%、トンネルの50%、河川管理施設の64%、湾岸施設の58%と急速に増えていく。

インフラの老朽化は12年12月の9人が死亡、2人が重傷を負った中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故をきっかけに大きな社会問題化した。トンネル内の点検が充分になされなかったことも原因のひとつにあげられており、同省は事故後、トンネル、河川施設、ダム、港湾施設などの集中点検を実施し、多くの不具合箇所について緊急補修を行ってきた。また、道路橋の90%にあたる自治体管理の橋では老朽化の修復工事などによる交通規制が08年には977件だったのが、13年には2104件と倍以上に増えた。

これらを受け、政府は昨年11月末に「インフラ長寿命化基本計画」を策定した。20年ごろには国内の重要インフラ・老朽インフラの20%でセンサー、ロボットなどを活用し、30年後には国内の重要インフラ・老朽インフラの全てでセンサー、ロボットを活用。ビジネス面では点検・補修等のセンサー・ロボットの世界市場の3割を獲得する――などとするロードマップを示した。

現在、橋の点検は、河川敷や水中に足場を組んだり、ロープにぶら下がったり、伸縮するブーム先に付いたデッキを持つ特殊な橋梁点検車による――など人が点検箇所にまで行って実施している。人によって判断にばらつきがあり、足場は設置に時間とコストがかかり、高所では危険が伴う。ロープでも高所は危険が伴い、点検に時間がかかる。橋梁点検車では橋の上からブームを伸ばすためスペースが必要で通行規制をしなければならず、橋の形式によっては橋の上からの作業はできない。

また、トンネルは高所作業車のゴンドラに乗って点検するが、道路の通行規制が必要で、点検に時間がかかるうえ、点検箇所とその状態が的確に記録されない。ダムでは潜水士が実際に潜って点検を行うが、時間と手間がかかり危険が伴う上点検箇所と状況を的確に記録できない――といった課題がある。

しかし、実際に道路橋を維持管理する市区町村では担当職員や保全業務に携わる土木技術者は年々減ってきているうえに、道路法施行規則の改正で今年7月からは橋やトンネルについては5年に1度、近くから目視による点検を行うことが基本となり、担当職員らの負担が増している。

同省によると、全国で70万橋のうちの68%を市区町村が管理しているが、担当職員数が5人以下が、一般市(政令市、中核市を除く)で19・7%、町で68・1%、村にいたっては91・9%と手薄な状態だ。また、14%の一般市、46%の町、70%の村で橋の保全業務に携わる土木技術者がおらず、いても5人以下というのが市で55%、町で52%、村で30%となり技術者不足は深刻になっている。

一方、近年、地震や火山の噴火、集中豪雨、台風、大雪など自然災害が多発し、発生リスクも高まっている。11年3月の東日本大震災以降でも、同年8月の台風12号▽9月の台風15号▽11月から12年2月にかけての豪雪▽12年7月の九州北部豪雨▽12月から13年3月にかけての豪雪▽13年10月の台風26号(大島土砂災害)▽14年8月の豪雨による広島土砂災害▽9月の御嶽山噴火――と、死者・行方不明者が15人以上になった自然災害が8件も起きている。さらに、11月末にはマグニチュード6・8の地震が長野県北部地方を襲い、大きな被害をもたらし、首都直下、南海トラフ地震もいつ起きてもおかしくないとも言われている。

大きな災害現場での状況把握や応急復旧は、2次災害などの危険もあったり、立ち入り禁止区域が設定されるなどして、人力での作業を簡単に進められないという安全面での問題もある。長崎県の雲仙普賢岳ふもとの水無川上流や岐阜県揖斐川町東横山の地すべり現場、中越地震の復興現場などの立ち入り禁止区域や危険箇所での災害復旧では、ショベルカーなどの重機を映像を見ながら遠隔操作して無人化作業を行っているが、映像を見ながらではスピード・精度が劣ることや、建設機械の傾きや振動がわからず臨場感がなく操作し難いといった声も出ていた。

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