「うたと音楽」で健康寿命延ばす
音楽健康指導士」を養成の協会設立[介護予防]

音楽健康指導士2級講座の様子=東京都渋谷区で11月20日

「カラオケ」を利用した高齢者の健康増進と地域コミュニティーづくりに取り組んでいる第一興商(東京都)が、「うたと音楽」で健康寿命を延ばすことを目指して一般社団法人「日本音楽健康協会」(音健協)を設立した。介護予防と生活機能改善のために、音楽健康セッション活動の実践指導や活動計画のコーディネート役を果たす「音楽健康指導士」の人材育成を目指す。協会設立にはNTT東日本、西日本、セコムなども参加。介護人材の確保は国が目指す地域包括ケアシステムの構築にあたっても大きなテーマになっており、音健協の取り組みの成果が注目される。

11月20日、東京都渋谷区内の施設には約180人の受講者が集まり、熱気に包まれていた。「音楽健康指導士」2級の資格取得のための集合研修会場だ。介護予防、介護支援を目的に作成された第一興商の生活総合機能改善機器「DKエルダーシステム」のコンテンツと一般の高齢者向け体操や映像などのコンテンツを組み合わせて、60分程度の「音楽健康セッション」をプログラムするための実践研修が行われていた。講師からは介護の程度に応じて、運動を軽減することや、参加者が興味を持ってくれるための工夫など具体的な指導が行われた。

音健協は「うたと音楽」が高齢者の介護予防などに及ぼす効果について共同研究を行ってきた東北福祉大に監修を、日本抗加齢医学会に協力を依頼して音楽健康指導士の資格制度を構築。音楽健康セッションのアシスタントができる準2級、既存のプログラムを活用した音楽健康セッションが実践できる2級、1級の3段階の資格を設けた。2級は計24時間の集合研修が必須となっており、認定試験を受けて合格した後、10時間以上の実践リポートの提出によって資格が付与される。

第一興商は「うた」が高齢者の介護や認知症の予防に役立つことに着目し、2001年に高齢者の健康維持を図るDKエルダーシステムを開発。3年前からは東北福祉大などとの共同研究で高齢者向けのコンテンツの拡充を進め、すでに全国約1万5000カ所の介護施設などが導入している。さらに東京都中野区や長野県松本市など自治体のコミュニティーセンターでの利用も拡大している。

一方で、これらのコンテンツをより楽しく、継続的に利用してもらうためには、運用するための人材の育成が不可欠だとして、資格制度の準備を進めてきた。音健協の戸塚圭介専務理事は「機械と人。人馬一体となった運用が確立されて、健康寿命の延伸、そして、医療費の抑制などの効果が得られる」と力説する。

当面は、地域のコミュニティーで活躍するボランティアに準2級を、介護・医療系のケアスタッフなどに2級を取得してもらい、それぞれの段階に応じた運用を目指している。戸塚氏は「例えば準2級は地域の元気な高齢者に取得していただき、地域コミュニティーの指導的役割を果たすことで高齢者の社会参加にもつながります」と狙いを語る。15年度に本格化する地域包括ケアシステムでは、介護予防事業などの地域支援事業の強化が予定されており、音楽健康指導士が、事業の担い手として重要な役割を果たすとしている。

介護人材の確保が急務

実際、介護現場の人材不足は深刻さを増している。国の社会保障審議会介護保険部会は13年9月4日付で「介護人材の確保について」と題した報告書を提出。団塊の世代が75歳以上となってくる25年度に向けて、地域包括ケアシステムを構築し、在宅サービスを充実していくためには、介護人材は237万~249万人が必要と推計している。そのため12年の149万人から毎年6・8万~7・7万人の人材を確保していく必要があると指摘している。

だが、現実はそう簡単ではない。同報告書によると、介護職員の離職率は常勤者で23・4%と全産業の11・5%に比べて高い。有効求人倍率は、13年6月時点で全業種平均の0・75倍に対して、介護職員は1・64倍と人手不足の実態を示しており、定着率をいかに上げていくかが課題となっている。

また、介護職についてのイメージを調査したところ、「夜勤などがあり、きつい仕事」と答えた人は65・1%、「給与水準が低い仕事」は54・3%に上るなど「きつい仕事」と認識している人が多かった。その反面、58・2%の人が「社会的に意義のある仕事」、29・0%が「やりがいのある仕事」と答えており、報告書は「介護職に対するイメージのさらなる向上が必要」と指摘している。

報告書では(1)介護ロボットの導入など職場環境の整備・改善(2)キャリアアップが図れる取り組みの強化――などの改善策を提言している。その中で、介護従事者のすそ野を広げるために、サービスの質の確保のために充実した資格制度の確立の重要性にも言及している。

介護福祉士などの国家資格とは別に、音楽と運動、健康指導に関する資格には、すでに音楽療法士、音楽レクリエーション専門員、健康運動指導士、健康運動実践指導者、介護予防運動指導員などの民間資格がある。

新たに音楽健康指導士の資格を創設したことについて戸塚氏は「私たちが提唱していくのは『健康カラオケ』です。自治体や地域の集会室などを利用して、いつでも、だれでも、好きな時に参加して、利用者同士が交流できる歌声イベントです。そのコミュニティーの安全で円滑な運営を図るのが音楽健康指導士の役割の一つです」と話す。来年2月には初の2級の資格取得者が誕生する予定だ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら