食料自給率目標(50%)引き下げへ
補助金頼みに限界 来年の基本計画に盛り込む[農政]

刈り取られロール状に圧縮された飼料用の稲。自給率向上のために飼料米の生産増が求められている=岐阜県高山市で7月28日

政府は、食料自給率(カロリーベース)を2020年度に50%にする現在の目標を引き下げる方向で検討している。13年度の食料自給率は39%で、目標達成が困難であるとの見方が強い。来年3月に策定する「食料・農業・農村基本計画」に新しい目標値を盛り込むため、農林水産省が議論を進めている。また、財務省は補助金に頼った自給率引き上げは無理があると指摘し、目標を引き下げる方向で見直して関連予算を効率化するよう求めている。

カロリーベースの食料自給率は、供給カロリーが国内生産でどのくらい賄われているのかを示す指標だ。食料・農業・農村基本法で自給率の目標を定めることになっており、00年に策定された基本計画で初めて設定された。

1965年度に73%あった食料自給率は89年度に50%を切り、10~13年度は4年連続で39%と横ばいで推移している。日本は食料や家畜の飼料などの多くを海外に依存しており、自給率は先進国の中で最低水準にある。

政府が10年の基本計画で自給率目標を50%に設定したのは、中長期的に世界の食料需給に不安があり、食料として国民に供給されるカロリーの半分を国内で賄うことを目指す必要があると判断したからだ。国の安全保障面からも自給率低下を懸念する声があった。このため高い目標として設定はしたものの、その後対策を施しても達成が困難な状況となっている。西川公也農相も10月の記者会見で、自給率の50%の目標達成について「相当、難しいと思う」と率直に述べている。

過去の基本計画での自給率目標を振り返ると、00年と05年に45%だったのが10年に50%に引き上げた。それぞれの計画の段階で10年後に達成すべき目標として掲げた。

食料自給率が低下した要因としては、消費面では自給率の高いコメの消費量が減り、自給率の低い肉類など畜産物の消費が増えるといった国民の食生活の大きな変化がある。生産面では農家の高齢化や担い手不足から就農者が減り、農地面積が減少するなど国内供給力の低下が挙げられる。

13年度の品目別の自給率は、コメが97%、野菜が76%、魚介類が64%、果実が34%、大豆が23%、畜産物が16%、小麦が12%などとなっている。

自給率を向上させるため、消費が減退している主食用のコメの生産を抑え、輸入に依存する小麦や大豆、家畜のエサにする飼料用米を作るよう促しているが、すぐに結果が出るほどうまくいっていない。

農水省によると、海外で日本と同様にカロリーベースの自給率目標を掲げているのは韓国やスイス、ノルウェー、台湾で少数派だ。11年のデータでは海外の自給率はカナダが258%、オーストラリアが205%、フランスが129%、アメリカが127%。100%を超えているは、自給率の計算で輸出した分は国内生産に含まれるため、輸出が増えると自給率が上がる仕組みになっているからだ。

自給率目標は見直し作業が進んでいる。農水省が10月に開いた食料・農業・農村政策審議会(農相の諮問機関)の企画部会では、自給率について「現行のような目標数値ありきでの策定は見直す必要(がある)」「新たな目標は背伸びしてジャンプしたら届くような数値にし、必ずやり遂げるというものにすべき」など、これまでの数値目標が高過ぎたという意見が出された。

さらに「自給率を高く設定することで無理な政策を進めることは税金を投入するとの観点でも問題」と、自給率向上のために費やされてきた補助金が「税金の無駄遣い」という指摘もあるとの見方が出された。

一方、財務省は10月の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で示した資料で「いたずらに財政負担に依存した国内生産への助成措置のみにより自給率の向上を図ることは困難ではないか」と指摘した。財務省の試算では、自給率を1%上げるには、国産小麦の場合、年間40万トンの増産が必要となるという。農家への補助金が膨らみ、年間420億~790億円程度の国民負担が増えるとしている。

そもそも自給率のカロリー換算は、国産の牛や豚でも飼料の半分を輸入に頼れば50%となる仕組みで、半分は自給していないことになってしまう。また、日本のように食料廃棄の多い国は自給率が下がってしまう仕組みとなっている。こうした点を踏まえ、自給率は日本の食料供給の実力を正確に反映していないという指摘がある。

食料自給率とは別に「食料自給力」という考え方もある。農地や農業用水といった農業資源、田畑を耕作する農業者、作物を生産する農業技術を組み合わせた考え方だが、現在のところ数値化されておらず分かりにくい。

「率」より自給「力」に着目

政府が5月に決定した農業白書(食料・農業・農村の動向)は、食料自給率の水準は緊急時の国内農業の食料供給力を表すものではないため「緊急時における安全保障を確保するため、国内農業生産による食料の潜在的な供給能力を示す『食料自給力』の維持向上を図ることも重要」と指摘している。

一方、内閣府が1月に実施した調査では、将来の食料供給について83%の人が「不安がある」と答えた。内訳は「非常に不安がある」が32・2%、「ある程度不安がある」が50・8%となっている。国際的な食料価格の高騰や、円安進行による輸入物価の上昇、外国産品の安全性の問題などを背景に、消費者の食に対する意識は相変わらず高い。国内での食料自給が重要との認識は広く浸透しており、農業振興への理解は深まっている。

農家の高齢化、担い手不足、耕作放棄地の増大など深刻な問題を抱える中で、国民の生活を守るために国内農業の強化は欠かせない。人口減少が進む中での日本の食料政策は転換点を迎えている。基本計画の策定にあたっては、国民に分かりやすい、より意味のある目標を掲げ、達成するための道筋をしっかり描くことが求められている。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら