シンガポールの日本人美容師に聞く「日本の悪循環」 ~サービス業も内需消滅でアジアへ

2014年12月09日(火) 田村 耕太郎
Photo by Thinkstock

高齢化する日本の美容室の顧客

シンガポールに移住されてイキイキしている美容師さんにカットをしてもらった時の話をお伝えする。このお店は東京の一流店よりやや高い値段設定だが、彼は大人気で、予約を取るのも楽ではない。東京に見切りをつけて、アジアに骨をうずめる覚悟で、家族とともにシンガポールに移住してきたこの美容師さんからいつも多くのことを学んでいる。大きな決断した人なので、日本、東京の、現状を冷静かつ正確に見ていると感じる。

「東京の高齢化は深刻だと感じています。今、美容室のメッカは原宿や青山ではなく、銀座になっています。美容業界で若い人という定義も、少し前までは10代後半から20代前半でしたが、現在は5歳ほど上がって30代前半までを指します。お客さんの高齢化は激しく、美容業界も介護予防のようなサービスになってきています」

「主要顧客だった若い女子は節約に走っています。もう美容室には来ないですね。だから原宿や青山で美容室をやっていてもお客さんはこないのです。彼女たちは自分でなんでもやるのです。美容器具が進化しているので、友達とそれをシェアしてカットやセットをしあったり、あるいはスマホで簡単にカットモデル依頼が見つけられるので、そこでプロにやってもらったりしています」

激減する消費

こういった現象は美容室に限ったことではない。若者の節約志向は飲食業界にも打撃を与えている。自分で弁当を作って会社で食べる「弁当男子」と呼ばれる人が増えているらしいが、これは男女にいえることで、若い世代は外食をあまりしなくっているという。夜の飲み会も行かない若者が多いと聞く。

これは、完全な悪循環の始まりだ。人口減少と高齢化で、たださえ、消費活動が活発といわれる若い世代の数が減っているのに、その若い世代が消費活動を抑制しているわけだ。

「若い子は若い子なりに、自分たちの時代に希望が持てず、これから税や社会保障の負担が重くなり、将来の返金は大幅になくなってしまうことを、今のうちからなんとなく気づいているのではないでしょうか。つまり、政治や上の世代を信用せず、自己防衛をし始めているんだと思います」

このシンガポール在住の日本人美容師さんは、会社の若手社員と話していてそう感じるのだという。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。