大谷翔平らが暮らしている 日本ハム「勇翔寮」長所を伸ばす人間教育

週刊現代 プロフィール

伸びる選手の共通点

若手がロッカーに貼るようになると、隣の先輩から「これ、本当に達成できるのか?」と冷やかし気味に声をかけられたりします。そのことが、「オレはやるよ」という発奮材料にもつながっていくのです。

今季2年目の大谷はチームの中心的存在になり、一軍の試合に帯同することが増えたため、勇翔寮にいる時間は必然的に少なくなりました。だからといって、大谷の人間教育が終わったわけではありません。20歳までは、まずは野球に集中してほしい。野球でしっかり生計を立てられる目途がついてから、社交的な場に顔を出しても決して遅くはないと思います。

したがって、遠征先では試合後、宿舎で用意した食事を食べてほしいので、大谷を含め、20歳以下の選手の外出は禁止しています。大谷が外出を希望する場合も、大谷と一緒に外出して食事を希望する先輩選手も、必ず栗山英樹監督に申告することを義務付ける、「大谷ルール」があるほどです。大谷以外の二軍の選手も、外出する際はどこで誰と会うのか、マネージャーに申告することを義務付けています。社会人としてのルールを覚えてほしいのです。さらに、20歳以下の選手は、車の運転や購入は禁止しています。入団して数年間は、何よりも野球を最優先してほしいのです。

また、私が球団にお願いして、寮生には、「読書の時間」を作ってもらいました。本が好きな選手は読みますが、読まない選手は全く読まない。でも、本を読むことで、人生そのものが変わる経験をする人もいる。野球選手は狭い世界に身を置いており、放っておくとスポーツ新聞しか読まない。視野を広げる一助にしてほしい、という気持ちでした。

起床後の体操、食事、読書は、寮生のルーティンとしました。読書は時間にしたらわずか10分。2階のミーティングルームには野球の専門書、小説からビジネス書まで、200~300冊置いてあり、何を読んでも自由です。

以前は本を読まなかったが、「読書がおもしろくなりました」と言ってくる選手も少しずつ現れ、読書に興味が出てきた子は、書くことが上達してきました。

今季、プロ4年目でレギュラーを確保し、43盗塁で初の盗塁王に輝いた西川遥輝は、書く内容の質があがってきた選手のひとりです。私も西川と同時に球団に入ったため、歩みをともにしてきました。寮生が書く日誌は、入団2年目まで提出は必須、3年目以降は自主性に任せていますが、西川はずっと提出してきました。私は提出された日誌をチェックし、赤ペンで返答しますが、昨年6月、西川が左ひざの靭帯を痛めて二軍に落ちてきた時などは、「残念」というマイナスの用語は使わず、「これはいい機会だ」と、西川が前向きになるような言葉を使いました。

西川はもともと、事細かくたくさん書く性分ではありませんが、一日やったことの反省点やそれを改善するための方策の記述が増して、同時に、「もっと活躍したい」という欲も、出てきています。

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