大谷翔平らが暮らしている 日本ハム「勇翔寮」長所を伸ばす人間教育

・読書の時間は必須
・目標は紙に書いて壁に貼る
・引退後も社会で通用する人間になれ

鉄は熱いうちに打て—。プロの世界に入った新人が必ず生活する選手寮に、元高校教員が着任した。めざすところは、クビになっても仕事に就ける人間形成。日本ハムが取り組む新人教育に迫った。

自分で気づかせる

アマチュアの指導者だった私に、プロから思わぬ誘いの声がかかったのは、今から7年前のことです。当時、監督をつとめていた神奈川・光明学園相模原高に、プロでも通用するようないい選手がいて、その選手の話を聞きに来たのが、日本ハムの大渕隆・スカウトディレクターでした。

私は、選手の自主性を引き出すことを重視した指導方針で、個人練習のほうの時間が長く、全体練習は、個人練習の「発表会」と位置付けていました。そんな私の指導法を話すと、同じく選手に自主性を植え付けたかった日本ハムと、めざす方向がピッタリ重なっていました。大渕さんと会う回数が増えるうちに、「ウチは人間教育に力を入れているので、一緒にやらないか」と、誘われるようになったのです。

プロ経験もない私がどれだけ貢献できるか、自信もなくて、最初のオファーから3年間、断り続けました。それでも、最後は大渕さんをはじめとする、球団の熱意に負けました。

日本ハムには、大渕さんやプロ経験のない熊崎誠也スカウトなど、アマチュア出身の人間が何人も活躍していた。そんな土壌にも背中を押され、「選手教育ディレクター(勇翔寮教官)」という、他球団にはない役職をやらせていただく決断をしました。

高校生もプロも共通していると思いますが、周りから「やれ!やれ!」と言われても、選手は決して主体的にはなれない。「やらなきゃいけないんだ」と、自分で気づく環境を作ってあげることが私の仕事なのかな、と思っています。

本村幸雄(43歳)。'11年1月より北海道日本ハムファイターズ選手教育ディレクター。神奈川・光明学園相模原高校の元体育教員。千葉・習志野高時代は2年時に甲子園出場。日体大進学後、3年時から学生コーチに就任し、指導者の道を志す。光明学園相模原高では'01年から10年間野球部の監督をつとめ、神奈川県大会では8強を4度。並行して、自立型の人間育成教育を指南する「教師塾」(原田隆史社長)のもとで学んだ。本村氏が実践する、長所を伸ばす人間教育とはどのようなものなのか。

私は、勇翔寮で寮生活をする若手選手の生活面を指導しています。入団後、高卒5年目まで、大卒2年目までは寮で生活することが義務付けられ、北海道の一軍寮に入れない15人を、おもに指導しています。寮に宿泊する日もあり、寝食をともにしています。

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