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話題の新刊『明日はわが身』著者が明かす 夫(56歳)が「若年性認知症」と診断されて

介護詐欺に引っ掛かった

共働きの忙しさで見過ごしていましたが、今になれば認知症の初期症状だったのでは、と疑えるできごとが思い浮かびます。

関西にはイタリア人顔負けに女性を誉める男性がたくさんいて、大阪出身の夫もその一人。外出前にお化粧するから待ってと言えば、「こんなにキレイなのに、まだ化粧してなかったの?」とおどける。そんな夫婦の他愛ないやりとりが、いつのまにか消えていました。本人もお洒落だったはずが、「どっちの色のシャツがいい?」と私に決めさせるようになった。判断力が低下してきたせいだったのかもしれません。夫は関西でのレストラン経営を経て、都内の精神科病院の福祉施設に再就職。第二の人生をスタートしたばかりでした。

はっきりと異変を感じたのは、'07年に私がノロウイルスに感染したときのことです。下痢と嘔吐をくり返し、夫の車で夜間救急外来へ向かう中、セルフ式ガソリンスタンドに立ち寄った。そこで夫は、給油の操作がわからないと言い出したのです。やむを得ず、吐きながらガソリンを入れる私を、黙って眺めている。何かがおかしい—不安でたまりませんでした。

こう話すのは、『明日はわが身 若年性認知症の夫と生きる』(新潮社)という新著を上梓した南田佐智恵さん(53歳)。南田さんの夫・秀男さんは56歳で「若年性認知症」と診断された。'08年のことだった。

当時、佐智恵さんは、作家・渡辺淳一氏(故人)の秘書として忙しい日々を送っていたという。

「有効な治療法も、根治薬も、今のところありません。詳しいことは、インターネットで検索して調べてください」

医師の淡々とした言葉は耳に入らず、大海の中へ放り捨てられた気分でした。

若年性認知症とは、64歳以下で発症した認知症のことですから、まずは経済的困難に直面します。私は、夫のプライドを守りたいと、夫の会社側と相談することなく自己都合の退職届を提出させてしまったため、収入は激減。あとになって、傷病手当金や失業保険が支給される場合があることを知りました。まだ若い夫が認知症になったことが恥ずかしくて、周囲の人に打ち明けられず、情報も入りにくかったのです。

仕事を辞めて、症状が急速に進行してしまったことも悔やまれます。家の鍵を閉める、ズボンのファスナーを上げる。当たり前のことが次々とできなくなっていきました。私自身も「なんでこんなこともできないのよ!」と毎日大声で怒鳴り散らし、睡眠導入剤と精神安定薬を手放せない状態が続きました。

そんなとき、インターネットでフィリピン・セブ島在住の日本人のブログを見つけたんです。

「風光明媚なセブ島の自然の中で、24時間体制の介護とリハビリを提供!」