入社11ヵ月で韓国へ、未開の地でソーシャルビジネス
ボーダレス・ジャパンの半澤さん

半澤節さん(24)は新卒入社11ヵ月目にして、韓国に渡り、ゼロからソーシャルビジネスの立ち上げをおこなった。言語の壁やビジネス経験など、不安要素を挙げればきりがないなか、半澤さんは韓国行きを即決した。その覚悟の裏には、旧友からの、「お前はできるだけ後悔のない人生を送りたいと言っていたが、どうやってそれを成し遂げるのか」という問いかけがある。

半澤さんは2013年4月、一橋大学を卒業後、ボーダレス・ジャパンに入社した。配属された部署では、妊娠期や授乳期の母親を対象にしたオーガニックハーブティ「AMOMA natural care(アモーマ ナチュラルケア:以下、アモーマ)」のマーケティングを担当した。

同商品のハーブは、貧困農家が無農薬で作っているものをフェアトレードで仕入れている。お腹の子どもに農薬の影響を与える心配もないため、母親を中心に好評だ。初年度となった2010年度の売上は2,399万円だったが、2014年度は9億円に迫る勢いだ。

国内では、妊娠期の母親向けのオーガニックハーブティのカテゴリーには競合が少なく、トップランナーである。その勢いを世界に広げていくために、韓国での立ち上げを上司から打診された。それは、入社して11ヵ月目の2014年2月13日だった。半澤さんは、韓国語も話せないし、新規事業の立ち上げも経験したことがなかったが、その日のうちに即決し、翌日の2014年2月14日に単身で韓国・ソウルへ渡った。

韓国では、ネット販売を軸にして、同商品を展開していった。同国で広めていくためには、乗り越えなければいけない壁があった。知名度のなさ・韓国での事業展開のやり方、さらには、競合商品の数だ。同国ではすでに授乳期・妊娠期に適したお茶があったのだ。

国内とは、知名度・信頼・方法など、勝手が違うため、半澤さんがはじめに取り組んだのは、「とにかく試してもらうこと」だった。韓国のマーケティング特有の「体験談イベント」やお試し商品の開発をおこない、また産後の母親が入院している病院や助産院にも足を運んだ。同時に、ネット広告や雑誌掲載など、同国での露出を高めていった。

知名度とともに、信頼を得るために、購入者一人ひとりに手紙も書いた。慣れない韓国語を、現地のメンバーに教わりながら、メンバーと一緒に何通も手紙を書きあげた。このような販売戦略で口コミを起こし、9ヵ月目には、日販で12万円を売り上げるまでに成長した。

2014年11月、半澤さんは日本に戻り、現在は韓国にいる現地メンバーとネットで連絡を取りながら、韓国事業を運営している。韓国での事業は順調に伸びており、2015年4月には黒字化できる見込みだ。

人をだますことに慣れた子どもたち

半澤さんが韓国行きを即決した大きな要因は、大学2年生のころ、旧友からかけられた一言だ。一橋大学に入学したが、体調を崩してしまい、休学。宮城県の実家で療養していたときだった。

「お前はできるだけ後悔のない人生を送りたいと言っていたが、どうやってそれを成し遂げるのか」と、実家に訪ねてきた友人は言った。この言葉がきっかけで、スイッチが入ったという。

半澤さんの両親は、弁護士で、幼いころから日本の社会で起きていることを、法律の世界、つまり裁判や事件を通して聞かされて育った。そのため、社会的弱者の境遇、経済格差や犯罪が起きる背景について問題意識を幼いころから持っていた。

ちょうどその時期に、周りの友人から、途上国へ行ったことで「価値観が変わった」と言われており、東南アジアに関心を持っていた。旧友の言葉で、その意識が強く刺激され、「まずは動こう!」と東南アジアに旅立った。

行き先は、インド、フィリピン。そこでは、お金をもらってこいと大人から物乞いを強要される子ども、靴磨きをして家族を養う子ども、ティッシュを奪い取り、それを食べようとしてしまう子どもを目の当たりにした。中でも、強烈に印象に残っているのは、人をだますことに慣れた子どもたちの目だった。

半澤さんが見たスラム街で生きる子ども

この現状を変えたいと強く想い、帰国後は、国際協力の学生団体に加入した。学生団体での活動もあり、就職活動では、社会的課題をビジネスで解決する仕事を優先に会社を探した。そこで見つけたのが、ボーダレス・ジャパンだった。

「フィリピンやインドの貧困地区で見たような子どもたちのために、働きたい」---その強い想いと行動力が韓国での事業立ち上げを任される結果として表れている。半澤さんは、「一度見てしまったその現状を、見過ごしたり、忘れることができなかった」と言う。「貧困を生む、この社会的構造を変えたい。そのために働きたい」。

アモーマの売上が伸びれば伸びるほど、より多くの貧困農家の自立支援につながる。半澤さんは、「子どもたちの機会の均等」を目指す。「どの子も、自分の夢を持つことができて、そしてその夢にチャレンジできる世界にしたい。そのために、貧困に苦しむ農家さんにオーガニックハーブ栽培というソリューションを提供し、技術指導から、買取保証・価格保証までする。そうすれば、安全かつ安心してしっかり収入を得られるようになるのです」。

半澤さんはこう続ける。「もちろんオーガニックハーブだけでは、すべての子どもたちが貧困から抜け出せるなんて思っていません。社会起業家として徹底的に力をつけ、将来は次々と新たなソーシャルビジネスを立ち上げ、一人でも多くの子どもたちの生活を変えます」。

韓国行きを即決したのも、旧友からのあの一言があるおかげだと言う。やらないで後悔するよりも、やって後悔した方が良い。

そのチャレンジングな姿勢と強い情熱で、「『貧困・社会的課題を解決し、人々の笑顔と共に生きていく』---そのことを通して、自分の人生を後悔のない人生にしたい」と力を込める。

社員と一緒に写る半澤さん(写真左端)

 (取材・構成/オルタナS副編集長池田真隆) 

「いまここ」に若者視点をプラスするエシカルメディア「オルタナS」の記事より一部編集・掲載)

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