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専門家50人が徹底分析 日本経済 1年後はこうなっている 流れを読み違えれば、会社も生活も崩壊する
巻頭大特集 「日本の景気」をとことん語り尽くす

給料は上がるか 消費増税延期で消費は増えるか 株高、円安は続くか スタグフレーションにならないか

不透明だ。不安も多い。つい目先のことばかりに頭がいく。そんな時代だからこそ冷静になって、先の先まで考え抜くことが大切になる。なにかが大きく変わろうとしている。急速に、そして急激に。

日銀がもう一度大きく動く

株価が「7年ぶりの高値」にまで上がったのに、生活はよくならない。大企業が「続々最高益」なのに、給料は上がらない。政府やメディアが日本の景気がよくなったと騒ぎ立てるほどに、自分だけ置いてきぼりにされた気持ちが強くなる……。年末を前に振り返れば、2014年はそんな年だった。

来年はよくなるのか、それとももっとひどくなっているのだろうか。気になる日本の景気の先行きについて、経済の専門家50人に聞いた。プロたちが読み切った「1年後の日本の姿」を紹介しよう。

まず押さえておくべきは、安倍政権が目指すシナリオ。単純に言えば、(1)アベノミクスで円安を進める、(2)日本経済を牽引する大手輸出企業を中心に業績が伸びる、(3)大手の賃上げ、雇用増、設備投資増が始まる、(4)大手の好業績が中小に波及し、全国的な賃上げで消費が活性化。それが企業の売り上げをさらに伸ばす……というものだ。このシナリオが奏功するかどうかを見極めることが、日本の未来を考えるポイントとなる。

(1)については、多くの識者は共通して、シナリオ通りに「円安がさらに進む」と見る。国民の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が外国株、外国債券での運用を現在より大幅に増やす方針を決めたことで、「最大30兆円ほどの円売りドル買い材料になる可能性が大きいため」(ちばぎん証券顧問の安藤富士男氏)である。

さらに、「4月の消費増税の影響が根深く、経済を成長経路に戻すには日本銀行によるさらなる追加緩和が必要になる」(早稲田大学政治経済学術院教授の若田部昌澄氏)。10月31日に「ハロウィーン緩和」に踏み切ったばかりの日銀だが、来年は3度目の量的緩和に踏み切る公算で、それが円安のエンジンを加速させるわけだ。

為替の水準は、「1ドル=120円を超える可能性が高い」(明治大学政治経済学部教授の加藤久和氏)というのが大方の見方だが、130円突破と見る向きも少なくない。「ユーロ圏に加えて、中国や韓国などが通貨切り下げ戦争に参入する中で、日本も通貨切り下げ策を拡大させざるをえず、これが円安を一気に130円台まで加速させる」(RPテック代表の倉都康行氏)という背景があるためだ。

この円安で、日本経済に「新経済圏」が立ち上がると複数の専門家は指摘する。たとえば、今年から始まったビザの大幅緩和や新たな免税制度で訪日外国人が増えてきているが、「円安進行がこれを加速させて世界的なビジット・ジャパン・ブームが起こる」(セゾン投信代表の中野晴啓氏)。航空会社や旅行会社から、「大手ホテル、地元の良さを生かした地方の旅館の業績が急拡大」(経済ジャーナリストの松崎隆司氏)。さらに、「都心部の百貨店、家電量販店、ドラッグストア、主要観光地や空港近接のアウトレットなど小売り各社の売り上げも伸びる」(前出・安藤氏)。

加えて、「世界的に見て円安で日本の不動産が割安になり、海外からの不動産買いラッシュも起きる」(元朝日新聞編集委員の阿部和義氏)。これまでは都心部の億ションや商業施設が中心だったが、「今後は北海道、軽井沢、京都、沖縄などのリゾート物件購入も急拡大する」(S&S investments代表の岡村聡氏)。外国人による新たな不動産マーケットの誕生だ。

一方で、安倍政権のメインシナリオである「(2)大手輸出企業の業績拡大」→「(3)大手の賃上げ、雇用増」は、綻びが生じる可能性がある。ある、というよりその危険性が高いという意見が多い。

というのも、「これまでの円高時に製造業が生産拠点を海外に移したから、円安でも輸出は増えない。すでに'07年以来の円安水準になっているのに輸出金額は当時の9割程度でしかない」(スプリングキャピタル代表の井上哲男氏)。輸出を左右する海外経済の動向を見ても、「日本の最大貿易相手国である中国経済が失速。来年はGDP成長率が7%台から5%への急降下があってもおかしくない」(国際投資アナリストの小口幸伸氏)、「欧州は長引く不況の下で大企業が倒産し始めれば、不良債権処理が進んでいないという問題を隠しきれなくなる」(クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏)といった悪材料が満載なのだ。

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