オックスフォードの看板学部、PPE(Philosophy, Politics and Economics)を勉強して

オックスブリッジの社会的意義Ⅱ

2014年12月09日(火) オックスブリッジ卒業生100人委員会
幣原明子
5歳から11歳まで父親の赴任のためイギリスに在住。日本帰国後は慶応湘南藤沢中・高等部へ入学。高校1年でイギリスRoedean Schoolへ留学し生徒会長も務める。大学はオックスフォードKeble CollegeでPPEを専攻。卒業後はロンドンPricewaterhouseCoopersで監査業務を行い、現在は東京の株式会社経営共創基盤でコンサル業務に従事している。

先週のケンブリッジ大学に引き続き、今週はオックスフォード大学の視点から「オックスブリッジの社会的意義」を論じる。

PPEを目指して

私はオックスフォード大学でPPE(Philosophy, Politics and Economics)を勉強したいと思い英国へ留学を決心した。そのきっかけとなったのは中学の時に川上あかねさんの『わたしのオックスフォード』という書籍を読んだ事である。小さい時から歴史や政治などに興味があったので、哲学、政治、経済という幅広い学問を同時に勉強できるPPEがあると知った時には、これこそが大学で勉強したい学科だとワクワクしたのを覚えている。

私は幼少期に父の仕事の関係で6年間イギリスに在住しており、小学校5年生の時に日本に帰国した。帰国後、日本の小学校に転入した時は、11才ながらかなりの「逆カルチャーショック」があり、苦労した。特に文系科目の授業でイギリスとの違いを感じ戸惑ったのを覚えている。例えば日本の歴史の授業では縄文時代から年号を覚えていく事を中心にするが、イギリスの小学校では、「何故戦争がはじまったのか」などを考えることが重視されていた。さらには歴史学者がどのようにして歴史を「形成」していくのかを理解するために、小学校の敷地内に昔住んでいた貴族の家族の調査をしたこともあった。そんな「イギリス式」の勉強が恋しかった中、PPEという学科があると知り、イギリスに戻りPPEを学んでみたいと意気込んだ。

大学から留学するという選択肢もあったが、高校からイギリスへ留学したほうが良いのではないかと結論を出したためイギリス南部の町ブライトンにあるRoedean Schoolという全寮制の女子高に転入した(実際には様々な入学経路があり、それらは年明けの連載で紹介予定)。ここでは割愛するが、4年間の全寮制女子高生活というとても特異な高校生活を送った後、念願のオックスフォードのPPEへ入学を果たした。

PPEとは

PPEはオックスフォード大学のBalliol Collegeで1920年代に始まった学位である。それまで英国の官公庁志望者や政治家が主に勉強していたClassics(Greatsとも呼ばれ、ラテン・ギリシャ文学、歴史、哲学、考古学等を勉強する学位)をもっと現代化させなければいけないという動きから、Modern Greatsという通称で始まったとされている。

Balliol CollegeはPPE発祥のカレッジ。PPE志望者は今でもBalliol Collegeへの入学を目指す人が多い。  By Peter Trimming via Wikipedia

日本では「政治・経済学科」が存在するため、PPEを勉強したというと、「何故哲学が入っているのか」と質問をされることが多い。オックスフォードの考え方では、政治や経済の思想は元々哲学から始まったものなので、哲学がすべての原点であるとされている。余談だが、オックスフォードには「数学・哲学」という学科があり、理系の源泉は数学、文系の源泉は哲学なので、最も学問の中枢に近い学科だという話を聞いたことがある。

1920年代に始まったPPEだが、現在ではイギリスの政界やメディア界はPPEの卒業生によって独占されている。首相のDavid Cameron氏を始め、外務大臣のWilliam Hague氏等閣僚22名中7名がPPE卒業生である。また、イギリスBBCやその他メディアの記者もPPEの卒業生が圧倒的に多い。海外でもアウンサンスーチーさんをはじめ、パキスタン・オーストラリア・タイ・ペルー・マレーシア・ガーナ・フィリピン・ポーランド等の政治家・首相・大統領なども卒業生として名前を連ねている。

実際に私の周りのPPE卒業生も様々な分野で活躍をしている。PPE卒業後の仕事はあまり決まっておらず、オックスブリッジ卒業生が多いABC業界(Accounting, Banking, Consulting)をはじめ、政界、メディア、法律、教育、NGO等、皆多様な人生を歩んでいる。




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