若手のヒーローK氏の言葉
『週刊現代』 古賀茂明「官々愕々」より
〔PHOTO〕gettyimages

先週の本コラムで、誰に投票すれば良いのかということを書いた。その後、各党の選挙公約がほぼ出揃い、メディアもそれを型どおり報道した。しかし、報道自主規制のおかげで、有権者にとって最も重要な、これまでの安倍政権の実績に関する評価がほとんど伝えられていない。その結果、有権者は、非常な混乱状態に陥ることになる。

例えば、安倍自民党は、この選挙ではアベノミクスを進めるのか止めるのかが問われると言う。そこには、アベノミクスは一体として前進しているという前提がある。しかし、前号でも指摘したとおり、アベノミクス最大の問題は、第三の矢と言われた成長戦略の中身がないことである。

安倍総理は、「私のドリルで岩盤規制に穴を開ける」と胸を張っていたが、そのドリルは、ずっと空回りのままだった。誰も止めていないのに、自分が、既得権との戦いに怖気づいて何もできなかったのだ。つまり、日本再生の鍵となる改革を進められなかったのは、勇気のない安倍総理の責任ではないのか、その安倍自民党に引き続き政権を任せて良いのか、ということが本当の争点なのである。

この問題を考えていて、私は、今、国民に最も人気があると見られるある自民党若手政治家K氏(名前はあえて伏せるが)との対話を思い出した。それは、2012年、まだ自民党が野党で、谷垣禎一総裁時代のことだ。
彼は、私にこう言った。

「自民党は、日本国民に対して、三つの大罪を犯しました。第一は、900兆円超の借金大国にしたこと。第二は、少子高齢化を放置して社会保障の基盤を危うくしたこと。第三に原発神話を作り福島の事故を招いたことです。この三つについて、真剣な反省をして、それに関する政策を大きく変えることが必要なのに、残念ながら、民主党の失政によって、何もしなくても政権奪回ができそうな状況です。しかし、国民は、自民党が生み出した失われた20年に愛想をつかして、民主党政権を選んだのです。仮に自民党が、その失敗を省みず、単に民主党の失政につけ込むだけで、何も変わらないまま政権に就いたとしたらどうなるでしょう。国民は、昔の自民党の失敗を完全に忘れたりはしません。今度は、自民党は変わっていないと、あっという間に国民に見透かされてしまい、非常に短期間で、また政権の座を追われることになるのではないかと、私は懸念しています。古賀さんはどう思いますか」

私は、もちろんこれに同意して、「自民党が犯した最大の罪は、日本を成長できない国にしてしまったこと」だと答えた。

実は、この若き自民党のヒーローK氏が懸念したことが、今まさに現実のものになりつつあるのではないか。

今露呈しているのは、「アベノミクスの失敗」という短期的な問題ではない。日本をダメにした自民党が、全く変わっておらず、決して改革を進められないという、より深刻な事実なのだ。そしてその原因は、もちろん既得権層との癒着である。

しかし、マスコミは、選挙前に政権批判をしてはいけないという「自主規制」もあって、この本質的な問題を一切報じなくなっている。その結果、皮膚感覚では、変われない自民党に気付きながらも、「改革を進めようとしている安倍政権を支持するのかどうかが問われている」という錯覚に陥る有権者が多いのである。

選挙前に、投票の前提となる最も重要な情報の一つである政権与党の実績に関する批判的な評価を報道しないのなら、マスコミはその存在意義を自ら否定しているのと同じではないだろうか。

『週刊現代』2014年12月14日号より

上記記事の詳細は「古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン」vol.111(2014年12月5日配信)に掲載しております

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