テレビも企業も飲食店も、ストーリーがなければ成功しない!
『物を売るバカ』著・川上徹也氏×毎日放送・本郷義浩氏

スペシャル対談
写真左:本郷義浩氏、右:川上徹也氏

勢いを増して売れ続ける『物を売るバカ』の著者、川上徹也氏とMBS毎日放送「水野真紀の魔法のレストランR」チーフプロデューサー本郷義浩氏の特別対談。本郷氏は長年の食べ歩きで得た知識をもとに、昨年11月に『うまい店の選び方 魔法のルール39』を上梓しています。「物が売れる」と「店が流行る」に共通したストーリー戦略をお聞きします。(構成/田中裕子)

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ネットの台頭でストーリーが注目されるように

川上 今日は、MBS毎日放送「水野真紀の魔法のレストランR」チーフプロデューサーで『うまい店の選び方 魔法のルール39』(KADOKAWA)の著者である本郷さんと、「売れるとは何か」というテーマでお話できればと思います。

本郷さんは美食家としても名を馳せていらっしゃいますが、今までずっと食にかかわる番組の制作をされているんですか?

本郷 音楽番組やドキュメンタリー、バラエティーの制作なども手がけていますが、『水野真紀の魔法のレストランR』の前も料理情報番組を担当していたので、料理情報番組を制作してもう24年になります。

川上 24年も!

本郷 はい。とはいえ、この24年で番組づくりの方針は大きく変わってきました。昔はおいしい店の情報、たとえば店名やメニュー、住所、電話番号などを伝えるのがいわゆるグルメ番組でした。けれど、今はそういう情報はネットに溢れています。その店にどのような素敵なストーリーがあるかを伝えないと、見てもらえません。

川上 そうか、ただの情報でいいならネットのほうが早いし、ランキングもあったりして美味しい店を選びやすいですもんね。一方、ストーリーは取材をして発掘しなければならないし、動画を作らないとなかなか伝わらない。

本郷 そうです。このストーリーの作り方も、まさに『物を売るバカ』に書かれているように「どん底、転機、起死回生」がベースになります。メニューの開発秘話だったり、不遇時代を救ってくれた運命的な出会い、偶然の気づき、−−そういったものがストーリーの素ですね。川上さんの本を読ませていただいて、「今までやっていたロケハン(収録の下見)や打ち合わせは、ストーリーを発見するための手段だったんだ」と気づかされたんですよ。

川上 ストーリーを発見するための手段?

本郷 その店のご主人ですら、自分の店のストーリーに気づいていないことが本当に多いんです。ご主人の料理に対する考え方や思い聞いたり、半生をふりかえってもらっているうちに、他の店とは違うストーリーに気づくことが多々あります。それがロケハンの仕事だったんだな、と今まで無意識にやっていたことを改めて認識できました。

川上 なるほど。でも、「ご本人が気づいていないストーリーを引き出す」って手探りですよね。なにかコツがあるんですか?

本郷 もちろん店によってさまざまですが、まずは「店名」ですね。大阪に『ラ・ルッチョラ』という店があるのですが、これはイタリア語で「蛍」という意味なんです。その店は、周りに店がない小さな街にありながら、深夜2時まで営業しています。店主の、「蛍のようにこの街の明かりになりたい」という思いが込められていると聞いたときは感動しました。