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第3部 なぜか、ホッとしている自分に気付いた 転落して手に入れた「私の小さな、小さな幸せ」
全角度調査「収入」と「幸福度」の相関関係

10億円が消えた後に

「金持ちになってから転落するまで、あっと言う間でした。だから、いまだに実感がありません」

元FXトレーダーの磯貝清明氏はこう語った。

磯貝氏は家業である再生資源回収・卸業の傍ら、FX投資で資産10億円を築くことに成功。一時は、一日に1億ポンド(当時の円換算で約250億円)を取り引きし、「日本一ポンドを持つ男」と呼ばれたが、'07年のサブプライム・ショックを契機に3億円の負債を抱えるまでに転落した。

莫大なカネを手に入れた人間がそれを失う時、一体、何を思うのだろう。転落してもなおカネに執着するのか、まったく別のものに幸福を見出すのか。

本章では転落の当事者たちに、その壮絶な経験から得たものを語ってもらった。磯貝氏の話に戻ろう。

「私がFXに熱中していたのは、ちょうど六本木ヒルズが脚光を浴びていた時期です。まずヒルズの会員制レストランに入会しました。入会金は併設のスパと併せて300万円ぐらいだったでしょうか。それだけでヒルズ族の一員になれたような気がして、誇らしい気持ちでした。

その頃、ヒルズ内のジムに行くと、よくホリエモン(堀江貴文氏)を見かけました。そのだらしない身体を見て、『こいつは俺よりカネを持っているかもしれないけれど、俺のほうが断然イケてるぜ』と思ったりしたものです(笑)」

家賃月80万円の部屋を借り、3200万円のランボルギーニを乗り回し、食費だけでも年2000万円を超える豪遊生活を送った。

だが、そんな生活が長続きするはずはなく、'07年9月の時点で10億円あった資産は3000万円にまで激減。さらに翌年、国税当局から所得隠しを指摘され、重加算税や刑事罰の罰金などを合わせて3億円の支払いを命じられた。

「本税は支払い終えましたが、まだ延滞利息などが1億円以上残っています。しんどいですが、正直、ホッとしている部分もあります。

今思うと自分はそもそも投資に向いてなかったのかもしれない。一日で3億円ぐらい損したことがあったのですが、その時『明日になれば少しは持ち直すだろう』なんて思ってパソコンの画面を消して寝ちゃったんです。もちろん次の日、好転しているわけはなく、損失が拡大しました。プレッシャーに負けて、逃げてしまったんです」

磯貝氏は今年、結婚したという。「もし戻れるのなら、今でもヒルズの生活に戻りたいですか?」と磯貝氏に尋ねた。