「沖縄県知事選挙とアイデンティティ問題」

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.049 インテリジェンス・レポートより
「オナガ雄志(たけし)」を支援する公式webサイトより

【事実関係】
11月16日に投開票が行われた沖縄県知事選挙では、翁長雄志氏(前那覇市長)が約36万の得票によって当選した。

【コメント】
2.
具体的な争点となったのは、米海兵隊普天間飛行場の移設問題だ。しかし、より本質的な事柄が今回の知事選挙で問われた。それは、沖縄が東京の政治意志に隷属する日本の一地方に止まるか、それとも過去に琉球王国という独自国家を持ち、他の日本の諸地域とは異なる歴史と文化を持つ沖縄が自己決定権を確立するべきかという沖縄人のアイデンティティをめぐる問題だ。

投票日の16日、琉球新報は社説でこう記した。

<第12回沖縄県知事選挙がきょう16日、投開票される。12回目だが、単なる繰り返しでない特別な意味があることは周知の通りだ。県内だけでなく全国的、国際的にも高い関心を集めている。

それだけではない。この1年の動きを考えれば、この選挙では、沖縄の土地や海、空の使い道について、われわれに決定権、すなわち自己決定権があるか、適切な判断ができるか否かが問われている。1968年の主席公選にも匹敵する歴史に刻まれる選挙といえる。国際社会にも、沖縄の先人にも後世にも恥じない選択ができるか。考え抜いて1票を投じたい。>

この記述が沖縄人の標準的な認識を示している。翁長雄志知事の誕生によって沖縄の自己決定権強化の動きは一層強化されることになる。

3.―(1)
日本の一部には、保守系の翁長氏が知事になっても、中央政府から圧力を加えられれば再び辺野古容認に立場を変更するという見方がある。これは沖縄の自己決定権を軽視した非現実的な見方だ。1879年の「琉球処分」(廃藩置県)によっても、沖縄人は、自らの共同体、文化を維持し、沖縄人という自己意識を失うことはなかった。同時に沖縄人も日本人としての自己意識も持つようになった。そのため現在、沖縄人の自己意識は、現在四つのカテゴリーに分かれている。

第一が、沖縄人性を完全に放棄し、日本人以上に日本人になろうとする沖縄人だ。日本人に過剰同化する沖縄人と言ってもいい。

第二が、「沖縄系日本人」という自己意識を持つ人びと。これが従来の沖縄で圧倒的多数を占めていた。

第三が、「日本系沖縄人」という自己意識を持つ人びと。沖縄人と日本人の複合アイデンティティを持っているが、どちらか一つを選ばざるを得なくなったとき、沖縄人を選択する人びとだ。

第四が、日本人性を完全に否定し、琉球人(沖縄人)という自己意識を持つ人びとだ。

3.―(2)
仲井眞氏も翁長氏も、数年前までは、「沖縄系日本人」だという漠然とした自己意識を持っているにすぎなかった。中央政府の強圧的姿勢を前にして、仲井眞氏や一部保守政治家は、紆余曲折を経た末に「日本人以上に日本人」になろうとした。

これに対して、翁長氏と別の保守政治家は、「沖縄系日本人」から「日本系沖縄人」という方向に自己意識をシフトさせた。翁長氏と同じベクトルでの自己意識の変化が広範な沖縄人の間で生じている。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol049(2014年11月26日配信)より