「『イスラーム国』における日本人ジハード(聖戦)戦士問題」

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.049 インテリジェンス・レポートより

ニーナワー県の難民キャンプの武装勢力の暴力から逃れた女性---〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
11月18日、イラン国営「イランラジオ」が日本向けに以下の放送をした。

<イラクで、多数の日本人がテロ組織ISIS(引用者註*イスラーム教スンニ派過激組織「イラクとシリアのイスラーム国」のこと。現在は、「イスラーム国」[IS]を自称している)に協力

イラクで、40名以上の日本人がテロ組織ISISのメンバーとして活動しており、このうちの一部がイラクの首都バグダッド北方のディヤーラ県と、サラーフッディン県で逮捕されたことが明らかになりました。

イラクのテレビ局「スメリアニュース」が、匿名の治安筋の話として伝えたところによりますと、「日本人テロリストは、北部ニーナワー県、ディヤーラ県とサラーフッディン県、そしてキルクーク県南部と西部で活動している」ということです。

この治安筋はまた、「イラク軍は、サラーフッディン県の町バイジやディヤーラ県で複数の作戦を実施し、日本人テロリスト数名を逮捕した」としました。

これらの日本人テロリストは調べに対し、空路でイラクにやって来たことを認めています。

この治安筋はさらに、「およそ4000人の外国人テロリストがISISと協力しており、彼らは陸路あるいは空路でイラクに入国している」としました。

イギリスの新聞タイムズは、最近、「日本人がISISに加わろうとしてシリアやイラクにやって来る理由は、収入の獲得や冒険を体験することである」と報じています。>(11月18日「イランラジオ」日本語版ウエブサイト

【コメント】
1.―(1)
「イスラーム国」に対して、米国とイランがそれぞれの思惑から、本格的な壊滅工作を展開している。

1.―(2)
11月8日、イラク北部のモスル近郊で、米軍などの戦闘機がイスラーム教スンニ派過激組織「イスラーム国」幹部の車列を攻撃した。その際、カリフ(イスラム帝国の皇帝)を自称する「イスラーム国」最高指導者のアブバクル・バグダディが重傷を負ったとの報道がなされた。

<米中央軍によると、空爆により過激派の戦闘車両10台を破壊した。車両には「イスラム国」の幹部が乗っており、数人が殺害された模様だ。衛星放送アルアラビアは、イラクの有力部族の話として、「イスラム国」を率いるバグダディ容疑者が「致命傷を負った」と報じた。これとは別に、シリアとの国境に近いアルカイムで「イスラム国」幹部が集まる民家に対しても空爆があったという。

バグダディ容疑者は「イスラム国」を率い、イラクとシリアの広い範囲を制圧。戦闘や支配地域の統治も指揮しているとみられる。「国家樹立」を宣言後、7月にモスルの大モスクで説教する姿がインターネットに公開されて以来、所在に関する情報はほとんど確認されていない。>(11月9日 朝日新聞デジタル)。

1.―(3)
米軍がバグダディに致命傷を負わせ、同人が死亡したとしても、「イスラーム国」の現状に大きな変化はないと思われる。それは、「イスラーム国」が最高指導者の指令によって動く縦型の組織でないからだ。

2.―(1)
2001年9月11日に米国同時多発テロを起こしたアル・カイダに対して米国は世界的規模で「対テロ戦争」を行い、2011年5月にはアル・カイダの指導者ウサマ・ビン・ラディンをパキスタンで殺害した。米国の「対テロ戦争」に対応する過程で、アル・カイダ系の活動家は、非集権的でネットワーク的なシステムへの転換を遂げた。

2.―(2)
「イスラーム国」の直接の起源となったのは、ザルカウィが創設した「イラクのアル・カイダ」である。「イラクのアル・カイダ」の特徴は、本家のアル・カイダと異なり、シーア派を異端とし、ジハードの対象とする宗派主義的態度にある。

2.―(3)
ザルカウィは2006年6月、米軍によって殺害されたが、「イラクのアル・カイダ」は勢力を拡大し、「イラクのアル・カイダ」は2013年にシリアの反政府組織を基盤に台頭した「ヌスラ戦線」と合同し、「イラクとシャーム(シリア)のイスラーム国」(ISIS)を設立したと宣言した。

しかし、これには「ヌスラ戦線」、本家のアル・カイダの双方から異論が出た結果、ISISは「イスラーム国」(IS)と改称し、アル・カイダから分離すると同時に「ヌスラ戦線」とも激しく対立するようになった。

2.―(4)
「イスラーム国」は、欧米や日本に在住するイスラーム原理主義過激派に対して、極力組織化を避け、分散して潜伏し、小規模なテロを繰り返すことでグローバル・ジハード運動を展開するという運動論を展開している。この手法は、今のところ成功している。

ジハードによる世界的規模で単一のカリフ帝国(イスラーム帝国)の確立という基本的信念を共有するだけの、緩やかなつながりのテロリスト・ネットワークが形成されている。欧米民主主義国においては、いかなる過激な思想であっても、具体的なテロ行動に着手しなければ処罰されないという人権原則の隙間を衝く手法だ。

「イスラーム国」と世界のイスラーム原理主義過激派は、組織化されていない緩やかなテロリスト・ネットワークを維持しているので、カリフを自称するバグダディが殺害されても「あいつは本物のカリフではなかった。だから神に見放された」と受け止められるだけで、それによって「イスラーム国」のネットワークが解体されることにはならない。このテロリスト・ネットワークは、日本にも張り巡らされつつある。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol049(2014年11月26日配信)より

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