大西洋 第1回
「沿道の大歓声を一度は浴びてみたいと思い、去年、東京マラソンに出場しました」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

もしも三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長と出会っていなければ、わたしは現在のように毎週末バーマンとしてカウンターに立つことなどなかったであろう。この幸運なご縁がもたらされた背景には、人と人とを結びつける月下氷人の天才、今は亡き藤巻幸夫の影響があった。

いまから2年8ヵ月ほど前のある晩、大西社長は藤巻と一緒にここサロン・ド・シマジ本店をはじめて訪れた。"平成の千利休の茶室"をうそぶくわたしの狭い仕事場兼隠れ家を目にした大西社長は、「この空間と同じイメージのバーを、伊勢丹のなかに作りましょう」と提案された。

じつはわたしは20歳のころ、編集者になろうか、それともバーマンになろうかと思案したことがある。ところが25歳のとき、運と縁によって奇跡的に集英社に入社した。67歳で編集者人生を無事に終えたあとは、物書きの世界に飛び込んだ。

そして70歳になったとき、雑誌『Pen』で「サロン・ド・シマジ ~バーカウンターは人生の勉強机である~」という連載がスタートした。その舞台となったバーチャルなバーが1年半後、前述の経緯があって現実の店としてオープンする運びとなったのだ。

わたしは71歳にして憧れのバーマンになることができた。幸運にも、若いころに抱いた2つの夢が両方とも実現したのである。

人生は出会いである。そして運命的に、出会うべくして出会う人がいるのであろう。今回のゲストとしてお招きした大西洋社長は、わたしにとって、そんな「運命の人」である。

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