本音で語る民主主義の政治記者、「国会王子」こと武田一顯氏の魅力に迫る

もしかすると、今の放送界で、もっとも著名な政治記者かもしれない。その人の名前は、TBSの武田一顯(たけだ・かずあき/48)氏。本来はTBSラジオのニュース情報部に所属する国会担当記者なのだが、分かりやすい解説やシャープな分析などがウケて、テレビにも進出。『サンデージャポン』(日曜午前10:00)の政治コーナーも担当している。

ラジオのリスナーたちからは、「国会王子」と呼ばれている。ニックネームが付いた政治記者はおそらく本邦初だろう。人気の表れに違いない。

ラジオ好きで知られる作家の小林信彦氏も武田氏のことがお気に入りで、週刊誌の連載エッセイで何度も武田氏のことを書き、「礼儀正しい民主主義の記者」と評したこともある。一体、どういう意味なのか? その答えを探ることが、武田氏の人気の理由を知ることにも繋がるはずだ。本人を訪ねてみた。

建前は語らず、自分が正しいと思ったことを伝える

まず、武田氏に対して、「政治について語るとき、心掛けていることは?」と尋ねたところ、「ポジショントークをしないようにしている」という答えが返って来た。

つまり、建前論は語らない。これこそ、「民主主義の記者」だろう。誰もが知る通り、日本は言論の自由が認められた民主主義の国であるはずだが、画面に登場する記者の話は不思議なくらい似た内容になりがち。タブーはないはずなのに、慎重過ぎるのか、それとも突出したくないのか・・・。

武田氏は1994年から約3年半、言論の自由がない中国・北京で特派員を経験している。それだけに「日本は本当に民主主義国家なのかと考え込んでしまうことがある」という。確かに、TPP問題一つとっても声高に反対の声を上げる記者にお目にかかったことはなく、歩調が合いすぎている気がする。

「北京で記者をやったからこそ、自由とは何かを深く考えたつもりです」(武田氏、以下同)

武田氏は本音で語る。言論が制限されている中国の記者ではないのだから。この姿勢が、小林信彦氏の高い評価や、視聴者やリスナーの人気に結びついているのだろう。

たとえば、消費税率の10%への引き上げ時期は、当初予定されていた2015年10月から、先送りになることが確定したが、それを早々と口にしていた放送界の記者は武田氏しかいない。現実論として引き上げは無理だと何度も強調していた。

「『景気全体が落ち込むから上げるべきではない』と言い続けていました」

11月17日に7-9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表され、その数字が予想以上に悪く、にわかに税率引き上げの先延ばしが具体化した前からだ。

もちろん、単に武田氏の私見だったのではなく、綿密な取材による裏付けがあった。まず、地方議員の声を重視していたという。

「自民党の議員であろうが、地方選出の政治家は早くから景気の悪さを肌で知っていて、彼らの間では『これは10%には上げられないな』という声が高まっていた」

ほかの取材源の声もあったが、さらに地方紙の論調にも着眼していた。全国紙のトーンは大半が引き上げもやむなしだったが、地方紙は大部分が反対。

「地方の声は無視できないと思っていました」

情報のほとんどは東京から発信されるが、有権者の多くは地方にいる。その基本構図を武田氏は忘れなかった。

「物事を語るとき、大きな流れに理由なく乗らないようにしています。みんなと違う意見であろうが、自分で正しいと思ったことを伝えようと思っています」

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