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自民「50議席減」一気に倒閣へ 安倍総理恍惚と不安、二つ我にあり
真冬の大決戦!「12・14総選挙」を読み切る
〔PHOTO〕gettyimages

「会心の一手」のはずだった。だが、アベノミクス失敗が露呈し、景気後退が明らかになった今、安倍政権に分のある勝負ではなくなった。選挙は水物—。早くも風向きが変わってきた。

消費税は5%に戻すべきだ

「私のアドバイスを聞き入れて、安倍晋三総理が10%への再増税を延期したのだとしたら、それは歓迎すべきことですが、そもそも4月に消費税を8%に増税していなければ、GDPはマイナスには陥らなかったはずです」

こう話すのは、米プリンストン大学教授のポール・クルーグマン氏だ。'08年にノーベル経済学賞を受賞した世界的経済学者は、本誌9月13日号などで「消費税10%で日本経済が終わる」と警鐘を鳴らし続けてきた。

今回、本人が改めて語るように、クルーグマン氏は11月6日に安倍総理と面談し、総理の増税延期の決断に大きな影響を与えた。クルーグマン氏が続ける。

「ただ、第1弾の消費増税の失敗がここまで響いていることを、安倍総理は深刻に受け止めるべきだと思います。すぐにでも元の5%に戻すべきです。

そうしないと、アベノミクスは失速してしまい、さらなる追加緩和をしても、十分な効果を挙げられないかもしれない」

クルーグマン氏と同様に「消費税を5%に戻すべきだ」と口を揃えるのは、世界的投資家のジム・ロジャーズ氏である。

「GDPがマイナス成長になったのは、当たり前です。日銀による巨額の金融緩和で円安になれば、日本が輸入している食料品や資源の価格が上がる。でも賃金は物価上昇に比べて上がっていない。そのために国民の生活は苦しくなる。やはり安倍政権は消費税を元の5%に戻すべきでした」

経済の「理論」と「実践」の分野で世界最高峰の二人が、こぞってアベノミクスの失敗を口にする。だが安倍総理は、それでも「アベノミクスは成功している」と強弁し、解散総選挙に踏み切った。

安倍総理は表向き、今回の解散の目的は「消費税10%を18ヵ月延期することの是非」について国民に信を問うことと説明する。しかし、GDPの2期連続マイナスという「景気後退」局面が明らかになった現在、消費税を予定どおり引き上げることに賛成する議員は与野党ともに、ほとんどいない。なぜこの忙しい年末に誰も反対していないことを争点に選挙をするのか、国民の間には白けたムードが漂っている。

だが、これこそが安倍総理の狙いなのである。

安倍総理は解散を決意してから、マスコミ各社の世論調査を注視してきた。女性2閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任をしても内閣支持率は安定しているし、消費増税には7割の人間が反対している。いま、増税延期を大義名分にして解散にもちこめば、選挙で勝てる—そう踏んだのだ。

事実、自民党内にはある種の楽勝ムードが漂う。

「慌てている若手も多いけど、今は一強多弱なんだから、このタイミングで解散して正解だと思っている」(自民党ベテラン代議士)

「選挙をやる上で一番心配なのは、無党派層が『反自民』に回ること。といっても、民主党時代に戻りたい人もいないでしょうし、他の野党も力がないですから、まあ、大丈夫かなぁと思います」(同若手代議士)

国民が白けムードのまま、投票率が伸び悩めば、組織票を握る政権与党が圧倒的多数の議席を得ることは目に見えている。

そして安倍総理は選挙で勝利を収めた後、こう言い出すだろう。

「私がこれまでやってきた政治が、すべて国民の信を得た」と。

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