第5回ゲスト:北方謙三さん (後編)
「シマジさんはまず、自分の価値観とは正反対の世界を書いてみることです」

2014年11月30日(日) 島地 勝彦
〔写真〕峯竜也 〔構成〕小野塚久男 〔撮影協力〕Panacee

【前編】はこちらをご覧ください。

自分の価値観とは無縁の世界に、創作のヒントがある

島地 北方文豪はずっと第一線で書いているけど、「作家になるより、作家であり続けることのほうが難しい」というのは感じていますか?

北方 もちろんですよ。ぼくと同じ世代にも、キラキラした才能を持ったヤツが大勢いました。デビューは早いけど、3年に一冊、次も3年に一冊。すると、もう次は書けずにフェードアウト。そんなパターンをたくさん見てきました。最低でも1年に3冊は書き続けないとダメだと思います。

島地 わたしは67歳でしがないエッセイストになり、これまでに13冊書きました。文豪から見て、なんとか及第点をもらえますかね?

北方 立派ですよ。でも、エッセイをいっぱい書くと消耗すると思う。小説は、物語が動きはじめたら流れに乗っていくらでも書き進められるけど、エッセイはそうじゃないですから。

島地 もちろん小説を書きたい気持ちもありますよ。ユーモア小説みたいなものを。

北方 シマジさんはね、まず知的なものを拭い去ったほうがいいと思います。知的で博識でユーモアがあるいまのエッセイの延長線上で小説を書いたとしても、たぶんリアリティは生まれない。ドロ臭いヤツがドブに落ちて、「これも悪くない、もともと汚れてたんだから」と悟るような作品。自分の価値観とは正反対の世界を書いてみることです。

島地 ドロ臭いヤツがドブに落ちる、か。貴重なアドバイスをありがとう。

北方 時代小説で売れっ子になった佐伯(泰英)さんとは、何度も一緒にスペインへ行ったことがあります。当時はカメラマンとしても活動していましたが、彼はもともと作家志望でした。でも物書きとしてはまったく芽がでなかった。

島地 「月刊PLAYBOY」でも闘牛の写真を載せたことがあるよ。

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